芽衣子の死

「電話が切れた後、みんなは芽衣子を探した。やけど、見つけられんかった。女の子が、川に落ちたゆうても信じてもらえんくてね。」


夏目さんは、歩きだした。


僕は、黙って後ろをついていく。


「次の日、釣りをしていたおじさんが芽衣子を発見した。葬儀は、その次の日におこなわれた。芽衣子のお通夜やお葬式は、異様な光景やったんよ。葬儀会場で、母親は義理父とイチャつきわろてて。芽衣子がいなくなった事に、泣いてるのは私達だけやった。親戚は、呪われた子を産むからやと罵った。」


小さな花屋さんに立ち寄ると、夏目さんは花を買った。


「芽衣子は、お墓に入ることも許されんかった。遺骨を骨壺につめ終わった瞬間、母親は冷たくこう言ったんよ。「ゴミにだせんからそっちで捨てとって」そう言って置いていこうとした。」


「なんやそれ。酷すぎるやんか」


黙って聞いていたけれど、限界だった。


「君は、若にソックリやね。」


「兄に?」


「うん。芽衣子の母親に若は、骨壺をもらうと言った。母親は、いらんから勝手にしいと若に言った。若は、一生懸命探してくれてん。芽衣子の為に集めた中絶費用と、子供を産む選択をした時の為に貯めたお金を使って。芽衣子を納骨堂にいれた。」


そう言って、その場所を案内してくれた。


「今は、私がここの管理をしてる。毎年12月31日に、みんなでここに集まるんやけど。去年は、若竹コンビは来んかったから何かあったんやと思ってた。」


夏目さんは、扉を開く。


「芽衣子、そっちで若に会えた?」


夏目さんは、お花を飾る。


「兄は、芽衣子さんが好きだったんですよね?」


「うん。そうやと信じてたんやと思うよ。だけど、それより好きな人に出会ってしまった自分に驚いたんやと思う」


「それより、好きな人?」


「これ、読んでみ。若が、今年の一月に送ってきた手紙。」


「読んでええの?」


「どうぞ。私は、まだ芽衣子と話してるから」


そう言って、夏目さんは芽衣子さんに語りかける。


僕は、兄の手紙を開いた。


めいへ。】


12月に行く事が、叶わなかった事を申し訳なく思ってます。


芽衣子が、いなくなった月日を考えていました。


俺はね、ずっと最後に芽衣子に言われた言葉の意味が理解出来なかったし…。


わからないフリをしていたんだ。


だけど、今になってようやく気づいた。


結婚を約束していた彼女が、俺の元を去った事に正直ホッとしたんだ。


俺はね…。


はちに、会いたいんだ。


17歳の夏休みを最後に八に会うことが出来なくなったのは、身長が伸びたからだった。


身長が伸びなかったら、俺はずっと八に会いに行っていたよ。


八と俺は、最後まで出来なかったけどキスはしていた。


初めて、キスをしたのは八で、八も俺が初めてだった。


れられたらバレてしまう。だから、最後まで出来なかった。


胸は、二人が作ってくれたけど…


下半身は、そうはいかなかったから…。


八へのネタバラシをずっとしに行けなかったのは、八の中で俺が女だって思っていて欲しかったから何だと思う、


でも、本当は俺のままで八に愛されたかったんだと思った。


母さんが持ってきた漫画を読んであの気持ちが恋のそれだったとハッキリと気づいたんだ。


出来るなら、最後に八に会いたかった。


八に盛大なネタバラシをしたかったな。


めい、いつか、俺の可愛い弟の九你臣くにおみが会いに来たときは、この手紙を読ませて下さい。


10年先か、20年先かわからないけど…。


そして、めいに預けたあれも…。   


【若】     




「何で、きゅうじゃないねん。」


僕は、手紙を握りしめて泣いていた。


「もっと、はよう知りたかった?」


「だったら、会わせてあげられたやん」


「若は、臆病者やったんよ。八に断られたくなくてずっとこんかった。じゃあ、盛大なネタバラシに今から行こか?君は、すごくあの頃の若に似てる」


「わかった。やったるよ」


兄が、ずっと出来なかったネタバラシを僕がしてやる。


納骨堂から、歩いてすぐのマンションが夏目さんの家だった。


僕は、あの頃の兄を作られる。


兄とは違い、170センチしかない僕は、まだ少し女の子っぽいか?


「サクラ色のワンピースは、着れるんかな?」


「わからん、無理かも」


「だったら、これで」


そう言って、夏目さんは、サクラ色のセーターを僕に渡した。


僕は、それとロングスカートをはいた。


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