第17話 降格させられていた
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「冒険者ギルドは『栄光の剣』のBランク降格をお伝えします」
「どういうことよっ!」
栄光の剣のメンバーの一人、斥候の女がテーブルを叩いた。
周囲には大勢の冒険者が集まっており、聞き耳を立てている。
偶然この場に居合わせたわけではなく、本日この時間に冒険者ギルドが栄光の剣に沙汰を言い渡すとの情報がリークされていたからだ。
「いきなり二段階降格だなんて、これまで私たちのパーティーがどれだけ貢献してきたかわかってるの?」
あれから数日が経ち、ルクスたちの悪評はさらに広まっており、彼が表に出ることを嫌ったため、代わりに斥候の女が話を聞きにきたのだ。
「勿論です。栄光の剣はワイバーンを単独パーティーで討伐したり、ゴブリンロードが作った集落を潰したり、他にもAランクで成しえない数々の依頼をこなしてきました」
受付嬢が栄光の剣の輝かしい実績を周囲の冒険者に聞こえるように読み上げていく。
「だったら!」
「ですが、現在の栄光の剣にはその力がありません」
声を上げた斥候の女を黙らせると、受付嬢は断言した。
「二段階降格の理由についてですが、まず。あなた方の素行についていくつかきな臭い噂が流れております」
最初は、ガリオンが他の冒険者やらに金を握らせて流した噂がほとんどだったのだが、元々栄光の剣のメンバーを良く思っていなかった者も多い。
そう言った人間がこれまで我慢していた栄光の剣の所業をここぞとばかりに触れ回った結果、彼らの悪評は冒険者ギルドの中枢まで届いてしまったのだ。
「それは濡れぎぬよっ! 私たちの悪評を広めたやつがいるの!」
斥候の女は胸に手を当てて無実を訴える。
「そうすると、同じパーティーに在籍していたテレサさんを追放したというのも間違いなのでしょうか?」
受付嬢の鋭い指摘に、斥候の女は答えた。
「勿論よ! あの時、私たちはテレサを追放するつもりなんかなかった。たまたま喧嘩をしていたところに居合わせたあの男が場をかき乱したせいで、彼女と話し合うこともできなかったのよ!」
当然突っ込んでくるだろうと思い、用意していた言い訳を口にする。
「そうですか、そうなるとランクを戻すことができるかもしれませんね?」
斥候の女の顔に笑みが浮かぶ。ルクスからは何が何でも処罰を減らすように言い含められていたからだ。
「何せ、あなた方が降格したもう一つの理由はテレサさんですから」
「どういうことよ?」
「かつて、数々の高難易度依頼をこなしてきた栄光の剣ですが、ある日を境に失敗がかさむようになりました。我々が調査したところ、その時期は彼女がパーティーを抜けた時と一致しています」
「うっ、そ……それは……」
周囲で聞いている冒険者たちも、受付嬢が言わんとしていることがわかった。
「おそらくですが、これまでの討伐依頼も彼女の魔法による活躍が大きかったのではないですか?」
指摘の通り、ワイバーンやゴブリンロードを討伐したのはテレサの魔法あってのものだった。
「もし彼女がふたたび栄光の剣に所属するのならAランク。悪評が本当にどなたかの仕掛けだと証明できるのであればSランクに戻ることも可能かと」
「わ、わかった。ルクスにはそう伝えるからっ!」
まだ挽回できる。その言葉を聞いた斥候の女は笑みを浮かべると、ルクスが待つ宿へと走っていくのだった。
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