第16話 盗賊のアジトを襲ってみた
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—―ドッカアアアアアアアアアアアアアアアアン――
突然の爆発に、盗賊たちは浮足立つ。
「何事だっ!」
「わ、わかりませんっ」
頭目が怒鳴りつけ状況を把握しようとするが、詳細を把握している者はおらず戸惑っている。
「しゅ、襲撃です!!」
爆発が起こってから数十秒、一人の盗賊が慌てて飛び込んでくると状況を説明した。
「馬鹿なっ! どうしてここがわかったんだ!」
この盗賊のアジトは街道からそれた森の中の洞窟で、発見されないように隠蔽工作をしているので、そこにアジトがあると知っていなければたどり着けないはずなのだ。
主要な街道に目を光らせており、王国の兵士や、強そうな冒険者の場合は手を出さないようにしていたし、襲う場合も有利なポイントからのみ実行し、失敗したとしても地の利を利用して離脱しているので捕まるようなことはなかった。
自分たちのアジトが襲われていると聞き、頭目は耳を疑った。
「それで、襲ってきたのはどこのどいつだ? 王国の兵士か? それとも他の盗賊か?」
一瞬、呆然としていた頭目だが、荒事を生業にしているせいか度胸がある。即座に切り替えると部下の報告を待った。
「二人組の冒険者です。男が剣士で女が魔法使い。先程の爆発は女の魔法のようです」
「たった二人で攻めてきただぁ? ふざけやがって!」
頭目は顔に青筋を浮かべると、
「手前ら何をぼさっとしてやがる、今すぐそいつらをここに引きずってこい!」
部下を怒鳴りつけた。
今回の件でアジトの場所が割れてしまった。たとえ撃退したとしても、新しいヤサを探さなければならない。
頭目は残った部下に財宝をかき集めるように命令し、自分もコレクションしていた宝石の回収へと向かう。
こんな時のために隠してある出口がもう一つあり、幹部連中にはそちらから撤退するように促していた。だが……。
「あれ、もう最深部か?」
「馬鹿な……早すぎる⁉」
頭目の前に剣士の男と魔法使いの女――ガリオンとテレサが現れた。
ガリオンは目をぎらつかせ、テレサは半眼で緊張感なく立っている。
時間にして数分程度、アジトに詰めていた盗賊は数十人いたはずなのだが足止めにもなっていないかった。
「襲ってきた盗賊たちなら全員寝てもらったぞ」
「あの人数を制圧しただと!? ありえない!」
大人数を相手に短時間でそれを行うのがどれだけ難しいことか頭目も理解していた。
だが、ガリオンの余裕の様を見ていると、あながち嘘とは言い切れない。事実、待っていても部下が駆けつけることはなかった。
「さて、ごたくはどうでもいい。溜め込んでるものを吐き出してもらおうかっ!」
ガリオンは剣を突き付け、きっぱりと宣言する。
『その言い方、どちらが盗賊かわかったものではありません。私を巻き込まないで欲しいのですけど?』
テレサが文字を書き、ガリオンに抗議をする。
書かれた文字はガリオンが即座に消したので、頭目からは二人が何やら秘密の話をしているようにうつった。
「くっ! 財宝を持っているやつは裏口から脱出しろ。残りは足止めだ!」
目的が財宝と言うことなら奪われるわけにはいかない。そう判断した頭目は部下に指示を出すのだが……。
「おっと、逃がすつもりはないぜ」
動き出した盗賊の向かう先に回り込んだガリオンは、
「無駄な抵抗をしないで寝てな!」
出口を塞ぐと盗賊たちの意識を刈り取っていく。
「【ファイア】」
盗賊の一人が魔法を使う。両方の出口をガリオンとテレサに塞がれてしまっているので退路がない。
こうなったら火事を起こして混乱している隙に逃げるしかないと思ったからだ。
最悪でもガリオンが魔法を避けるので何人かは抜けられる。そう判断していたのだが……。
「おっと!」
ガリオンは【ファイア】を避けることなく剣で受け止める。
「馬鹿な!?」
放たれた魔法はその場で止まり、剣が火を纏い始めた。
「まさか盗賊の中に魔法を使えるやつがいるとはな」
「ぐああああああっ!」
斬られた盗賊が叫び声を上げ倒れる。身体は斬られると同時に焼かれており嫌な臭いが漂う。
「このままやってもいいけど、ここで火は物騒だから収めとくか」
剣から火が消え、ガリオンの身体に魔力が吸収された。
「うーん、いまいちだな。力強さも上品さも足りてない」
吸い取った魔力の評価を告げるが、ガリオンの特殊体質を知らない者にしてみれば意味不明だ。
「さて、打てる手がなくなったのなら全員お縄についてもらうとするか!」
その後、頭目を含めた盗賊はすべて二人の手によって倒され、縄で縛られると近くの街へと引き渡されることになるのだった。
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