第15話 盗賊を探してみた
「んー、なかなか盗賊が現れないな?」
俺たちは現在、盗賊が出るという旧街道を進んでいる。
道は舗装されておらず荒れ放題。両側が崖になっており、盗賊たちが地の利を生かして襲いかかってくるとしたらこの場所が最適だろう。
一方的に矢を射かけてこちらの戦力を奪い、金品などの荷物を強奪する。
許しがたい所業である。
肩を叩かれたので振り返ってみると、テレサが俺を見上げていた。
『あの、盗賊に会いたいみたいな発言はどうかと思うのですが?』
文字が書かれ、テレサから不審な目を向けられる。
俺はその文字に触れ、消し去るとはっきりと告げる。
「俺は、盗賊に、会いたい!」
断言したせいか、テレサが『スススッ』と素早く距離をとって引いた様子を見せた。
この足場で転ばずにそんな動きをするとは器用なやつだ。
「この前のサイクロプス討伐でマナポーションを使ってしまったし、高級旅館に宿泊して豪華な料理に酒を堪能して滞在費を支払った。つまり、金がないんだよ!」
マナポーションは本当に高価なアイテムなのだが魔力が力になる俺にとっては必需品だ。
冒険者ギルドで報酬を受け取れば買うこともできるが、手元にないとどうにも落ち着かない。
だが、現状の俺の財布はかなり軽くなっており、途中の街で補充しようにも金がなければどうにもならないのだ。
『あの……私が使った分ならお金支払いますよ?』
「いや、あれはお前さんの魔法も計算の上での討伐だったからな。作戦を考えたのが俺なんだから支払わなくていい」
そう言いつつ、文字に触れて掻き消す。
「だから、足りない分はここの盗賊が溜め込んでいる分を奪い取って解決しようと思ってるんだ!」
ゴブリンやコボルトなどの人型モンスターや盗賊などの人型モンスターは収集品を溜めこむ習性がある。
そして、国はそれらを討伐した際に得られる物に関して所有権を討伐者にすることを認めているのだ。
俺が熱弁を振るうと、
『あの……、盗賊は人型モンスターではなく人ではないかと?』
テレサが困惑気味の表情で文字を書く。俺はその文字を手でなぞり消し去る。
「そう言うわけだから、テレサもそんな強者オーラを出さず、もっと駆け出しの魔法使いみたいに怯えた様子を見せてくれ。じゃないとやつらが現れない」
俺の演技指導に、テレサは自分が餌として利用されているのだと気付き、もの凄く冷めた目を向けてきた。
「俺、ここで大金を得たら街に戻って祝杯を上げるんだ!」
まだ見ぬ盗賊とやつらが持つ財宝に想いを馳せた俺は、早く彼らが現れてくれないかとそわそわと周りを見渡すのだった。
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