1-3話
「あ、ああ、あなたたち、何者なんですか……!?」
狛夜も、漆季も、何も言わない。だが、華を見る表情は二人とも険しく、青と赤の瞳は
華の危険メーターは、一気にレッドゾーンへと振り切れる。
(ここから逃げないと!)
立ち上がって振り向くと、神社のご神木に巻く
「ワン!」
「きゃっ」
華はぶつかる寸前で
「静まれいっ!」
しわがれた声は、ビリビリと空気が震えるほど大きい。
思わず正座した華の後ろで、漆季や強面たちが
「ご足労おかけしました、組長」
深く頭を垂れる相手は、
大きな鼻と盛り上がった頰、走った幾重もの
老人の足下に、ハチワレ犬がトコトコと歩み寄ってお座りした。
──この人が、鬼灯組の組長。
華は、
「狛夜、お前がついていながらこの騒ぎ。普段であれば
組長は、華の手からあふれ出る翠色の光に目をとめた。
「厄介者がいるようだな。この嬢ちゃんはなんだ」
「
微笑む狛夜に対して、漆季の方は華を
「親父、ソイツは匂います」
「たしかに匂う。あやかし者と関わりがある匂いだ。しかして、それだけでは
「僕の見立てでは、彼女のペンダントに秘密があるようです。金槌坊が殴ろうとしたら彼女を守るように発光しだしました。わずかに、
狛夜の説明に
「嬢ちゃん、名前は」
「華……葛野華と言います」
言い逃れはできないと悟って正直に答える。
すると、組長は「葛野だと?」と衝撃を受けた。
「どうされました、組長?」
「葛野といえば、かの
何だか分からないが相手は混乱しているようだ。
今が一世一代のチャンスだと思った華は、コールセンター勤務で習得した謝罪パターンを引き出して考えた。
モンスタークレーマーに対応する場合、最短で電話を切るテクニックとして用いられるのは、話の主導権を相手から奪う方法である。
まずは一切の反論をせずに相手の不満を聞く。たいてい怒鳴りつけられるが、人の怒りは二十分ほどしか続かないので、ひたすら聞き役に徹する。相手が疲れてきたら、今度は謝罪の言葉を伝える。口を挟まれないよう、あくまで誠実に。そして、相手をいい気分にさせたところで「ご意見ありがとうございました」と通話を終わらせるのである。
モンスター集団の組長が相手となれば、これが最適解のはずだ。
「この度は、お騒がせして申し訳ありませんでした!」
華は畳に両手をついてガツンと額を打ちつけた後で、申し訳なさそうに顔を上げた。
「皆さまに対するご無礼、謹んでお
すらすらと謝罪の言葉を並べる華に、一同はぽかんとしている。
見事、自分のペースに巻き込んだ華は、精一杯の作り笑いを浮かべて立ち上がった。
「それでは、これで失礼させていただきます」
「動くな」
歩き出そうとした瞬間、首筋がヒヤリとした。
視線を下げると、短刀が押し当てられている。背後を取っているのは漆季だ。
(いつの間に……)
華の背中をじっとりした嫌な汗が流れる。
「鬼灯組の正体を知ったからには、生きて帰すわけにはいかない……」
今にも首を
「だ、誰にも言いません。ここで見たことは、すべて忘れます」
「そう言って裏切るのが人間だ」
漆季は空いた手で華の首を
「あ……」
ゾクリと肌が
漆季の手はそのまま下へ、つうと肌をなぞっていき、鎖骨の辺りで止まった。
「騒ぎの元凶はコイツだ」
漆季がペンダントのチェーンを引くと、シャツの
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