第3話 決着

 戦いを遠くに眺めながらトレジャーさんと駄弁だべることしばし、聖騎士さんたちが森の近くまで押し込まれそろそろ決着がつきそうである。


 あっ、バーニングさんがおもむろに後方に飛び上がり、歌って踊りだした。するとファイアエルフさんたちがオレンジ色のオーラに包まれて見るからに動きが良くなる


「船長、あれってなにやってんスか?」

「歌って踊ってる」

「いや、なんかファイアエルフさんたちにバフかかってないっスか?」

「見ての通りだよ?バフかかってる。そら自分の推しが歌って踊ってたらバフもかかろう?」


 なるほどなぁ見たまんまかー、バフがかかる理由も想像した通りだった。


 そしてメイスを振り上げて掛け声を上げるマッスルさん。それを見てやれやれしょうがねぇなみたいな雰囲気をだす聖騎士さん。マッスルさんただのファンじゃねぇか!いや聞いてたけど、マジで大好きなんだなぁ。


「よーく見ときな?ここの決戦システムはね、横入りができるのさ。いわゆる漁夫の利、援軍、横殴り、なんでもありだからね。いつもならそろそろ」


 トレジャーさんの言葉の途中で大音量のテーマBGMとともに空中に「グレート・チャンピオン」の文字が表示される。そして僕らの反対側から茶色のオーラに包まれたオーク族に語り継がれる太古の英雄とその一団が現れる。


「おお!きたぞ!グレートだ!」

「すげー、なんて筋肉なんだ!!たまんねぇぜ!!」

「キミも似たようなもんじゃないか」

「いやぁ僕もオークよりのヒューマンとか言われますけどォ?やっぱり憧れちゃいますよねー」


 オーク族の英雄グレートさんとその一段はファイアエルフさんたちに向かっていく。グレートさんが雄叫びをあげると一団が茶色に輝きだす。そしてぶつかり合う、かと思われた。


「邪魔をするなぁ!!!!」


 マッスルさんだ。さっきまでバーニングさんが歌って踊るのに「いえぇ〜〜い!」とか言って熱狂していたのにいつのまにか鬼の形相でグレートさんにメイスを叩きつけている。白かっまオーラがプラチナに変わっている!


 すさまじい物理攻撃の音が衝撃とともにやってくる。グレートさんの屈強な肉体から繰り出される攻撃を防御もせず全て筋肉で受け、鬼気迫る表情でメイスを振り回す!そして聖騎士のみなさんもプラチナのオーラに包まれ、さっきまで半裸だったのにいつのまにかフルプレートメイルをきっちり着込みグレートさんの一団を押し返している。後ろからはファイアエルフさんたちの援護もある。あっという間にグレートさんとその一団は撃退され、マッスルさんがときの声をあげる!それに応えて雄叫びを上げる聖騎士さんたち!よく揃った動きで向きを変えて森を燃やし出すファイアエルフさんたち。って、あっ、、


「ああああああ!!」


『ゲームセット!Winner バーニング・エルフ!&トレジャー・パイレーツ!』


 喜ぶバーニングさんとファイアエルフさんたち、そして膝から崩れ落ちて地面を殴りつけるマッスルさんと座り込む聖騎士さんたち。


 ほんの少しの間を置いて、その全ての目がこちらを向く。横目で船長を見るとイタズラが最高したような顔でにこやかに手を振っている。僕もとりあえずマネして手を振っておく。


 そしてトレジャーさんは小舟に乗ると自然な所作で後ろを向かせる。慌てて乗り込む僕。


「よーし!逃げるぞー!」

「「逃すなぁーーー!!!」」


 追いかけてくる全てを張り切って勢いよく荒野を進む小舟。あっという間に


「あはっ、あははっ!」

「楽しいだろー?うちの団員がいればもっと楽しいぞー!」

「団員の先輩がたはどれくらいいるんですか?」

「うーん、日によってまちまちだけどだいたいいつも2万人くらいはいるぞ?だから今日この時2人っきりなのはスペシャルに特別だな!」

「それ、同じ意味っす」


 そう言うとトレジャーさんはこちらを向いてウインクをして屈託なく笑う。


「わかってるよ、それだけ特別だってこと!」


 そんなトレジャーさんはすごくまぶしくて


「イケメンの状態で今のもう一回やってもらえないっスか?」

「だーめ、、あれ疲れるから」


 だめかー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る