七夕のキセキ

樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須

七夕のキセキ

「今日もムシムシして暑いわね。(墓石にお水を掛けながら)のどは渇いてないかっ。最近雨、続いてるもんね。…はい、あなたの好きなヒマワリ。やっぱりヒマワリって良いよね。見てるだけで元気になるから私もヒマワリ大好きだなぁ」彼の墓前でそう話しかけながらヒマワリを供えた。


彼とは高校2年から付き合い始め、交際5年目の7月7日に彼からプロポーズをしてくれた。でもその数日後、彼は交通事故で突然この世を去ってしまった。


彼が亡くなった今でも7月7日は大切な日。だからこうして毎年7月7日になると、彼が好きだったヒマワリを持ってお墓参りに来ている。


手を合わせ目をつむる。彼と過ごした日々が次から次へと思い出され、涙がボロボロとこぼれた。すると「泣かないで」と彼の声が聞こえた気がした。

私はびっくりして顔を上げると、そこには彼がいた。いや、彼の雰囲気に似ている見知らぬ男性がいた。


急いでバックからハンカチを取り出し、涙を拭った。男性に「あ、すみません。彼のお知り合いですか?」と聞くと、その男性は『分からない』と答えた。そして『なぜかここに来なくちゃいけない使命感に襲われて』とヒマワリの花束を眺めながら言った。


私が思わず「ヒマワリ…」とボソっと言うと、男性は『以前は花なんか全く興味無かったんですけどね。心臓の移植手術をしてからですかねぇ、花屋を見つけるとヒマワリを買うようになってしまって』と、なんだか照れくさそうに言った。

その照れくさそうにする仕草が、一瞬彼に見えてドキッとした。


そういえば昔、彼から臓器提供意思表示カードを見せて貰った事があったっけ。

もしかして…?

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