epilogue:早川杏奈

全部を捨てて一緒に逃げようって約束した彼女は

次の日、私の前から姿を消してしまい、いなくなった。

学校にも、先生から無理やり教えて貰った彼女の家にも

もう何処にも彼女の姿はなくて、誰もその行方を教えてはくれなかった。


少し経って、風の噂で、実はあの後自殺未遂をして入院していたとか、

母親が虐待で訴えられて、彼女は施設に入ることになって町から離れたのだとか

そんな話が耳に入ってきたが、私にはどうでも良かった。


彼女は私の元に現れなかった。

彼女は私を選ばなかった。

ただ、それだけが私に残った結果なのだから。



あれから数年経った今も、雨の日にはいつも彼女を思い出す。

ザーザーと降り続く雨音の中、

彼女の冷たく濡れた指先が、私の身体を熱くしたあの夜を。

貪るように何度も何度も口付けた、あの甘い唇を。


どうしようもない甘い痛みと疼きが

私の心を縛り付けたまま離さない


















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