動けない、そんな日は

CHOPI

動けない、そんな日は

 頭が痛い。目が覚めた瞬間の感想。今日は何もしたくない。そんな日。


 「どうしたー、大丈夫かー?」

 休みます、と連絡を入れたら返ってくる上司の言葉。それに『大丈夫です』とだけ返して布団の中に潜り込む。どうせ今日は大した作業が無いことはわかっている。とやかく言われることも無い。


 ダメな日、ってのは生きている限りやっぱりどうしたって避けられない程度にはやってくる。その日をどうやって何とかやり過ごすか。社会人になってからそのことに気が付いたけど、ちょっとだけ気が付くのが遅かったかもしれない。もう少し早く気が付いていたら、学生のうちにもう少しうまい対処法を見つけられていた気もする、なんて。タラレバばっかり。やめた、考えるだけ無駄だ。


 布団の中で何するでもなく、ただひたすらに時が過ぎ去るのを待つ。温かい布団の中にもぐっていると少しだけやってくる睡魔。こうなったらこちらのモノ。その睡魔に身をゆだねて眠ってしまえばいい。今日みたいな日は起きていたところであんまりいいことも無いから。そう思って静かに意識を水面下へと落とす。


 ぼんやり、夢を見ていた。ような気がする。目が覚めた途端に全部忘れて、漠然と何か夢を見ていた、っていう記憶しか残っていないけど。時計に目をやるとお昼になる少し前だった。そういえば朝ごはんも食べていなかったっけ。お腹が空いた、とは思わなかったけど、なにか口に入れたい気もして渋々布団の中から這い出る。


 キッチンに行って、でも作る気力も湧かないから、こういう時のために買って置いてあるカップスープを一つ、取り出す。ケトルに水を汲んでお湯を沸かして、湧いたお湯をカップスープの既定の線まで入れる。3分ほど待ってかき混ぜて、はい出来上がり。文明の利器に感謝しかない。


 スープを流し込んだ後は身体に悪いと分かっていても、その体が布団を欲しているから布団の中へと逆戻り。とはいえ先ほど寝ているから睡魔はやってこない。暖かい布団の中、何をするでもなくぼーっと過ごす。


 ……本当はたぶん、いろんなことに思考を巡らせている、気がする。気がするっていうのは結局、布団から出たその瞬間に何もかもリセットされて記憶に残っていないから。考え事をしているせいで休んだ気がしないのは悪い癖だ。ちゃんとぼーっとできるようになりたいな、なんてよくわからないことを考え始める。ほら、また考えてる。考えないって難しい。


 ぼんやりしているといつの間にか部屋が暗くなっていて、あれ、もうそんな時間だっけ、と体内時計の狂い方に少しだけ焦る。スマホの画面を見て時間を確認すると、もうすでに夕飯の時刻にはなっていて、でもやっぱり今日はどうしたってダメな日だから。真っ暗の部屋、起きだすことも億劫でそのまま過ごす。闇が深くなるほど、なんでか少しホッとする。


 闇が深くなる、と言ったって所詮都会の光は明るくて。電気なんかつけなくても外からの明かりで目が慣れれば基本問題ない。今日はお風呂も止めた。歯だけ何とか磨いてまた布団へ。眠れるわけないと分かっていながら目を閉じる。終始、頭の中がうるさい。でもそれすらきっと、明日の朝には忘れている。



 今日はどうしてもダメな日。でもそんな日だって確かにある。

 そんな日くらい、ダメなまま過ごすのくらい、許してほしい。

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