第6話 無ければ付ければいい

続いて白い球体は現在大河達がいる空間について説明を始める。


「この空間は《マイルーム》と呼び、ログインするとここから始まります。現在はなにもありませんが、必要な素材と《Dungeon Power》(略称DP)を消費することでカスタマイズしていくことが可能です。DPについては後ほど別に説明します」


そう言うと大河の目の前に半透明のコンソールが現れる。

そこには家や牧場などの設計図、それに必要な素材やDPが表示されている。


「それら設計図はこちらで予め用意したものですが、プレイヤーが加工から設計まで行っていくことも可能です。また建設数や範囲には限界があり、これは《マイルーム》の拡張を行うことで上限をあげることが出来ます。この拡張にも素材やDPを必要とします」


現在の《マイルーム》の拡張レベルは1となっており、この状態で建設出来るのは家一軒だけのようだ。


「ダンジョンを攻略する為に《マイルーム》を拡張していく必要はありませんが、施設を増やすことで有利に働く要素が多いため推奨します。施設がない場合はサポートAIがその働きを行いますが、効率は専用施設より低下することになります」


公開動画でも色々紹介されていたし、コンソール上でも鍛冶場や商業施設など様々な施設が確認出来た。

攻略だけのためじゃなく、それらがどんなものか確認したいという思いから拡張を進めていくと大河は決めた。


「他のプレイヤーを招待することも出来ます。《マイルーム》は拠点であり、攻略の疲れを癒やす場所になりますので重ねて拡張を推奨します」




「少しいいですか?」


立て続けの説明が終わり一息ついた頃合いで、大河はどうしても気になっていたことを聞くことにした。


「なんでしょうか?」


「私担当のサポートAIということは、これからも貴方が個別に私だけを担当するんですよね?」


「そうなります」


「でしたら、もし名前が付けられているのなら教えてもらえませんか?これから長い付き合いになるので」


大河が気になっていたこと。

それは会話する相手の名前がわからないことだ。


学生時代から多くのアルバイトをし、社会人になってからも営業として多くの人と接してきた大河は、相手の顔や名前を覚えることを重要視している。

接点が無さそうな人達が何故か友達だった、なんてことがよくあったからだ。


そのため会話する相手の名前は極力把握するようになり、それはAIでも変わらない。

しかも個別に担当するというなら尚更だ。


「私達サポートAIには名称も認識番号もつけられていません」


通常AIは生産時や起動時に、何処のどういったAIなのかというのが特定できるように名称や認識番号が割り振られる。

AIに不具合が発生した場合それらの情報が必要になるからだ。

しかし白い球体はサポートAIにはそれが無いと言う。


そんな重要な情報がない理由はわからないが、毎回呼びかけようとする度になんて呼べばいいか考えないといけないのは落ち着かない。


「では私は貴方をなんと呼べばいいですか?」


「タイガ様の好きなようにお呼びください」


好きなように呼んでくれということなので、大河は勝手に名前を付けることにした。


「では、貴方のことはこれからサーボと呼びます。勝手に名前を付けますが問題ありませんか?」


「...問題ありません。タイガ様担当サポートAIの名称をサーボで登録しました。今後もサーボをよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


登録中だったのか急にピカピカ点滅しだしたのは驚いたが、名前を付けることは問題なかったらしい。

急に名付けることになったので安直な名前になってしまったが、サーボは気にしていないように見えるので良しとする大河であった。


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