しごとのつかれをごしごし

『くぉんくぉん』


 ご主人様、失礼します。あの、もしよろしければお背中をお流ししたいと思っているのですがいかがでしょうか?


 ……ふふ。そんなにおろおろしなくても大丈夫ですよ? わたしは全然恥ずかしくありませんし、ご主人様も考えすぎですよ。何か特別な事情がないのでしたら、ご主人様のお体を綺麗にしてあげたいのですが。


 ……本当ですか!? ありがとうございます。そう言ってもらえると、ご奉仕魂が燃えますね。では、ご主人様、失礼しますね。


 ……え? もちろん、脱衣していますよ? 着衣したままですと、濡れてしまいますし。申し訳ないのですが、わたしは着替えを一着も持ってきていませんので、着たままでのご奉仕はむずかしいです。それでは、中に入りますね。


『すちゃっ、すちゃっ、すたっ、すちゃっ』


 ご主人様、べつに背中を向ける必要はありませんよ? わたしはどうも思いませんし、どう思われても構いませんので。ふふ。あっ、そこの青いタオルをお借りしてもよろしいですか? よっと。……ボディーソープも使わせていただきますね? 心配しないでください。なるべく少ない量にしますので。


『しゅこっしゅこっ』


 ごしごし、しゅわしゅわ。


『ごしゅっごしゅっごしゅっごしゅっ――』


 お待たせしました。タオルの泡立てを終えましたよ。これでいつでもご主人様のお体を綺麗にする準備が整いました。ご主人様、どこから洗ってほしいなど、ご要望はありますか?


 ……どこでもいいと言われましても、困ってしまいますね。では、ここは一旦お背中から洗っていきますね。……ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 ふふ。ご主人様、お背中気持ちいいですか? 普段手が届かない場所ですからね、わたしがしっかり洗ってあげますね。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 はい、洗い終えました。ふふ、丁寧に洗ったので、ご主人様のお背中はとっても綺麗になりましたよ。つるつるすべすべです。


 ……いえ、これくらいお礼を言われるまでもありません。それに、まだ体全体を洗い終えていませんので。さてご主人様、お次はお耳を洗っていきますね。まずは、右耳から綺麗にしていきますね。泡が耳の中に入り過ぎていたら言ってくださいね。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 しっかりと、奥まで……。ちゃんと全体が綺麗になるように三百六十度回転させるように。


『ごしごし、ごしごし』


 はい、お疲れさまでした。右耳は無事にきれいにし終えましたよ。さぁ、次は左耳の番ですね。ご主人様、少しだけ顔を横に向けてくださいね。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 表面だけでなく、頑固な汚れを落とすように……。だけど、傷つけないように優しさも忘れずに。


『ごしごし、ごしごし』


 ふふ。これでご主人様のお耳は綺麗になりましたよ。なので、他の人に細かいところまで清潔にしている素敵な男性と思われるのは間違いありません。素敵な女性も満足して、ご主人様にうっとりしちゃいますよ、ふふ。それでは、お次は腕を洗っていこうと思います。さぁ、腕を伸ばしてください。……ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 ご主人様の腕は、しっかり筋肉がついていますのに、細くて美しいですね。ふふ。この腕をもっと綺麗にしてさし上げますね。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 ふふ。ご主人様の腕はつるつるのお肌に仕上がりましたよ。それでは、お次は前の方を洗っていきたいと思います。


 ……前の方は前の方ですよ。前面です。体の前面です。つまり、胸やお腹といった箇所です。わたしがご主人様の前に移動しないと洗いづらくなってしまいますので、移動しますね。


 ……あぁ、先ほども言いましたが、わたしは何も思いませんし、ご主人様も何も気にすることはありませんよ? ふふ。そんな顔を赤らめながらそむけなくてもいいんですよ。……では、鎖骨あたりから始めます。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 しっかり、くぼみにたまっているモノをすくいあげるように……。


『ごしごし、ごしごし』


 はい、無事洗い終わりましたよ。首回りもすっきりです。それでは、次は胸を洗っていきますね。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 ご主人様、どうかしましたか? うっとりした顔をしていますが、わたしの洗い方が気持ちよかったですか? ふふ。いいんですよ、自分の気持ちに素直になってください。欲望に従ってわたしに身を任せてくださいね。それでは、次はお腹を洗っていきますね。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 ご主人様のお腹は引き締まっていて立派ですね。しっかりと計算されたお食事をとっていて、十分な運動をこなしているのが分かります。ふふ。

はい、お腹も綺麗になりましたよ。さあ、お次は足に移りますね。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 ご主人様の足も筋肉が程よくついていて、健康的に見えてとても素敵ですね。綺麗に洗ってもっと魅力的にしたくなってしまいます。ふふ。さぁ、足の裏も洗っていきますよ。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』


 ご主人様、どうなされました? そんなニヤけた顔をしながらもだえてしまって。あ、もしかしてくすぐったかったですか? 申し訳ありません。ですが、ここはご主人様に耐えていただかないと、綺麗にできません。どうかもう少し頑張ってください。


『ごしごし、ごしごし』


 ふぅ、できました。しっかり指の間も綺麗に仕上がりました。それと、ご主人様の笑い声を聞けて、わたしも楽しく洗うことができました。あら、ご主人様、大丈夫ですか? 少し疲れた表情をしていますが、ふふ。……さて、今のでご主人様のお体のほとんどを洗い終えました。けど……。


 ……いいえ。まだ洗っていない箇所があります。ですが、その箇所を勝手に洗うのは、ご主人様にとても失礼だと思ったのでどうしようかと迷い、後回しにしてしまいました。なので、今ご主人様にご確認したいのですが、その……残っている箇所をわたしが洗ってもよろしいでしょうか?いえ、ヘルパーとしてきっちりとご主人様のお体を隅々まで綺麗にさせてください!


 ……そんな遠慮なさらずに。顔を真っ赤にさせなくても大丈夫ですよ。わかっていますので、優しく扱いますからご安心ください。ふふ。 


 ……了解しました。その気になってくれてありがとうございます。では、ゆっくり洗っていきますね。……失礼します。ごしごし、ごしごし。


『ごしごし、ごしごし』

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