お昼ご飯

 ……ご主人様、どうかしましたか? なにか言いたそうにそわそわしていますが。


 ……あら? いつの間にかもうお昼ご飯のお時間になってしまいましたね。申し訳ございません。気づいていませんでした。ちなみに、ご主人様は朝ごはんは遅めでしたか?


 ……そうですか、まだなにも食べていないのですね。はい、わかりました。それなら、もしイヤでなければ、わたしがご主人様のお昼ご飯をこれから作っていきたいと思っているのですが、いかがでしょうか?


 ……そんな手間をかけさせるようなことをさせたくない、と? ご主人様、お優しいですね。でもそんな焦ったりしなくても大丈夫ですよ。わたしは手間のかかることを代わりにやるために派遣されているのですから。だけど、そのお気遣いは嬉しいです。ありがとうございます。さて、ご主人様。わたしが作りたい料理をご主人様にお出しすることも可能ですが、ご主人様の趣向と合わないかもしれません。なので、もしよろしければこんなものが食べたいなぁって料理があったら言っていただければ作ってみようと思うのですが、なにかありませんか? 和風に洋風、遠慮なく言ってください。


 ……んわっ!? ……こほん、失礼しました。えっと、カレぇライスが食べたいのですか? わたし、結構いろんな料理を作れるのですが、ご主人様は本当にカレぇライスを作って欲しいとご所望ですか?


 ……わかりました。ご主人様のご希望に沿うのがわたしの役目ですので、カレぇライスを作ることにします。ですが、せっかく優しいご主人様にめぐり合えたのですから、食材から厳選するところから始めたいですね。ですので、是非わたしを買い物に行かせてもらえないでしょうか? あっ、安心してください。なるべく早く戻るようにします。ご主人様を長い時間お待たせするつもりはございませんので。


『こっこっこっ――』


 ……えっ、あ、はい? 家にあるもので料理してほしい、と? しかも、一般的な家庭に出されるモノがいいと? それは構わないのですが、カレぇライスの材料は揃っているのでしょうか? なにか不足しているようであれば、やっぱりわたしが美味しいカレぇライスのために買い物に行ってこようと思っているのですが。


 ……あら、カレぇライスを作るのに必要な食材はすでに揃っていると? なるほど、わかりました。それでは、買い物に行くのをやめて、今すぐ料理を開始した方がよろしいでしょうか?


 ……おなかはすいているけれど、ゆっくり料理して大丈夫なんて、ご主人様は本当にお優しいですね。


『ふりっふりっ』


『ふぁさっ、ふぁっさっ』


 それでは、これから揃っている材料を使って、ご主人様がご希望しているカレぇライスを作り始めようと思います。あの、お台所をお借りしたいのですが、わたしが使っても問題ないでしょうか?


 んわっ!? ……こほん。そうですよね、失礼しました。使ってはいけないのでしたら、わざわざわたしに料理を作らせませんよね。そんな簡単なことも理解できないポンコツで申し訳ありません。


 ……ご主人様、ありがとうございます。にっこりとした笑顔でそう言っていただけると、心の底から嬉しさが湧きあがり、気分がよくなれます。


『ふりっふりっ』『ふぁっさん、ふぁっさぁ』


 ご主人様のお優しい言葉をいただけて、わたしはより一層美味しいカレぇライスを作らなければいけないと決意をあらたにしました。ご主人様、どうか期待して待っていてください。

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