わんOneDays、ドッグでグッドデイズ

!~よたみてい書

ふさふさしてる彼女

『プィンプゥオーン』


『とっとっとっとっとっとっ……』


『ウィーン』


 んわっ!? ……こほん。……こんにちは、初めまして。わたしはケアホーム&ケアメンタルヘルパー紹介所から派遣されてきました、No.MG2033ナンバーエムジーニセンサンジュウサン、通称ンムギと申します。こちらが、本日サービスの体験を申し込まれたお宅で間違いないでしょうか? もし身に覚えが無かったら、わたしはすぐに帰りますのでご安心ください。


 ……え? 本日、体験サービスを申し込んでいる? ……それならよかったです。ほっ。……あぁっ、わたしの方が安心してしまいました。お客様の前でため息なんかついて、恥ずかしいお姿を見せてしてしまい申し訳ございません。


 ……そんなこと全然気にしていない、謝らないで大丈夫、と? お客様にそう言ってもらえて、ンムギは大変うれしく思います。お客様はお優しいのですね。


『ふりっふりっ、ふぁさっふぁさっ』


 そんなお客様にめぐり合えたことに、わたしの尻尾も喜びでふりふりしてしまっていますね。……こほん。ところで、わたし、そろそろお客様のお宅の中に上がらせてもらってもよろしいでしょうか? このまま玄関で立ち話をしていたら他のお宅に迷惑になってしまいますし、サービスがなにも行えないので。


 ……はい、ありがとうございます。では、お客様のお宅にお邪魔させていただきますね。


『こっこっこっここっ』


『ウィーン』


 お客様、わたしの靴はここに脱いでおけば大丈夫でしょうか?


 ……はい、わかりました。それならこのまま置きっぱなしにしておきますね。もし気になるようでしたら、あとでお客様が移動させても構いませんので。


『とっととっとっととっととっとっ……』


 ……あの、本日出会ったばかりのわたしに言われても嬉しくないと思われますが……お客様のお部屋、とても綺麗にされてますね。正直、わたしなんか必要ないと思ってしまいました。


 ……そんなことない? いえいえ、謙遜しなくて大丈夫ですよ。本当に清潔で整えられたお部屋ですよ。目立つ汚れも見えませんし、物も少なくて動きやすい空間になっていますし、とても過ごしやすい部屋ですよ。


 ……褒めすぎてしまいましたか? お客様、お顔が赤くなっていますよ。……あっ、そうですよね。当サービスをご利用になられているということは、お客様はもう、ご主人様とお呼びするのが正しいですよね。申し訳ありません。……あの、ご主人様とお呼びしてもよろしいですか?


 ……ありがとうございます。ではこれからは、お客様のことはご主人様とお呼びしますので、どうぞよろしくおねがいします、ふふっ。ご主人様、ちょっと恥ずかしがっていますか? またお顔が少し赤くなっているような気がします。……それで、あの、さっきからご主人様の視線がわたしの背後、それもちょっと下の方だったり、わたしの顔の少し上に向かれている気がするのですが、どうかしましたか?


 ……あぁ、この耳と尻尾が気になるのですか? これはアタッチメントですよ。わんちゃんのモノとそっくりで、もふもふしていますでしょう?


『ふりっふりっ』


『ふぁさっ、ふぁさー』


 ……どうされましたか? そんな興味津々に目で追ってしまって。もしかして触ってみたいとか思ってますか? 大丈夫ですよ、わたしは、わたし達はご主人様のご希望に沿うのが業務内容ですから、満足いただけるまで触ってもらってもいいんですよ? あっ、イヤな感情は一切抱きませんので、本当に大丈夫ですからね? ただ、乱暴に触られると、正気を保っていられる自信はありませんが、ご主人様はそんなことするようなお方ではないですよね? ふふ。


『ふりっふりっ』


『ふぁさっ、ふぁっさっ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る