第5話 能力と生きる

瑞原さんから、面白い人と出会ったと連絡が入ったのが2月。以前に私には対の人がいて一緒に動くようになるだろうと神様から言われていたのだが、その人かもしれないというのだ。


瑞原さんのクライアントの姪御さんで、何かついているんじゃないか、訳の分からないことを言ったりしたりするので親戚、家族も困っていると相談があった。

霊視したところ、神様、霊体、本当に色々なものが勝手に出入りしていると分かった。

本人とメールを交わすようになり、彼女が普通の生活ができるようになりたい、この能力をコントロールする方法を私に聞きたいという気持ちになってきたので、テレビ会議をして直接話してみた。

その時は、昔からの友達と話すようにお互い分かり合えて楽しく話ができた。私がやっていることを話すと理解し、やってみると言っていた。

私と同じものが見えているし聞こえている。

ただ、自分の魂は離れた所に逃げていて、神や霊たちに好きにさせているのが気になった。このままだと、彼女の人としての人生を全うできないだろう。一刻も早くコントロールできるようになってほしいと願った。


私たちのグループLINEにも入ってもらい、直接彼女の様子が把握できるようになったが、とにかく不安定な精神状態だった。一瞬ごとに違う者が入っているようで、コロコロと言うことが変わる。理不尽なことも多くて、大量のLINEメッセージにともすればこちら側のメンタルもやられかねない状況だった。そんな彼女をみんなで支えて、力のコントロールのしかたを覚えてもらおう、その能力を人の役に立てられるように持っていこうとした矢先、彼女が豹変した。

彼女の中の者が彼女の魂が戻ろうとするのを察知して本性を出したと言うべきか。

自分はギリシャの女神ペルセポネだと言い出した。それからは「人間ごときが」などと、言葉遣いも荒くなり、脅すようなことを言い始めた。

それと同時に、親戚の家に刃物を持って押しかけたりと尋常でない行動もあり、瑞原さんの説得も聞かない。私とは、多少一目置いた感じもあり普通のやりとりはあったのだが、次第にLINEは来なくなった。


彼女自身が自分の力を楽しんでいて、コントロールする気がないと判断し、瑞原さんとともに、能力を封印し、勝手に彼女に乗り移れないよう術をかけた。

すぐさま、何があった、みんなが心配だ と探りを入れてきたが、とりあわずにいた。

このため、激怒した「彼女の中のもの」から傷ついた謝れとサイキックアタックが入り、瑞原さんはかなり身体的にもダメージをうけた。


彼女の結界は、私だけはすり抜けることができるのに気づいた瑞原さんが情報空間上で私になりすまして結界をすりぬけるのに成功した。そして「彼女の中のもの」が消えたふりをしているだけでまだ巣食っているのを見つけた。しかし、色々な術を使ってみてもなかなか追い出すことができない。長い間に結びつきが強くなってしまっているようだった。


グループLINEも彼女から切られ、これを機に一切連絡も取らなくなったが瑞原さんへのサイキックアタックは続いた。それをかわすために、情報空間を操作して瑞原さんは彼女から見えなくなることができて、この術はかなり功を奏した。

引き続き、瑞原さんが親戚の方から様子は聞いていたが、親戚も距離をとっていて、落ち着いているようだとのことだった。そうして3ヶ月ほどして、突然、彼女が入院(おそらく精神疾患として)したとの情報が入ったのだった。


力のコントロールができなくては、力はないのと同じだ。

人として生きることは苦しいことの連続だ。こんな能力をもっていたら、なおさら。敵だらけの世界で生きていくことになるわけで、さらに苦しみは増える。私は人のことを小馬鹿にしたようなことを言う霊体には、こんな苦しみを耐えられるのかと聞いてやる。そうすると彼らも黙ってしまう。

家族にさえも受け入れられず理解されない寂しさから、神と名乗るものたちといることを選び、自由にさせてしまった気持ちは分からなくもない。

でも、とうとう今生の人としての自分の人生を手放してしまった。助けを求めていたのに。私たちも手を貸そうとしていたのに。



「皆」見ていて!

私は、自分の人生を人として生ききる。そのために生まれて来たのだから。

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