第15話 ━衝撃━
(地球の皆にもこの方法を教えてあげてくれ。これは新時代の幕開けだ。たくさんの人が救われるぞ。)
そんな自己紹介が終わって、
「なんかやっぱこそばゆいね」
「そういうもんでしょ」
「というか、それが役に立つところ、久しぶりに見たな」
ビストが機材を手にとるニオに言う。
「……私はこれが何かに使えるって信じてたから。」
鞄に押し込みながら返事を済ますニオ。続けて僕に訊いてきた。
「んでもって、実は私達は故郷の惑星ラノハクトってとこから知的生命体が確認されていたこの星まで「授業の一環」として遥々調査しに来てたってなわけなんだよ。どう思う?」
(——!?!?)
「……どう思うって……え?そうなのか!?」
唖然。自然な流れで飛び込んで来たそのセリフに見合わない程のキーワードが含まれていた。口も目も大きく開いた。今まで有耶無耶にされていた「この世界に来た理由」を知り、途端に前のめりになる僕。やっと出会えた。
その話を詳しく聞かせてもらいたい。お洒落な喫茶店のテーブルが少しだけ揺れた。
(そうかこのタイミングで聞けるのか。掘り下げたいが、ちょっと待ってくれ。考察をするための一時停止ボタンが欲しい。まぁ時間は止まっているんですけど、そうじゃなくて。)
触角がピンと立ち、表情から晴れ渡るほどのご機嫌なことがわかるニオ。真相を聞いて驚愕を隠しきれるはずもない僕。いつもより瞬きが多め。彼女らが異星人であること、それは前からそれとなく勘付いていた。星とか言ってたし。
(地球の調査かぁ。授業の一環かぁ。そんな容易く……へぇ、なるほど、そちらも大変ねぇ。)
今日は生きてきた中で最も情報量が多い日だ。
ニオと友人たちもこんな僕の衝撃が走ったリアクションと立て続けに出会して心なしか満足げな表情にも見える。
(そんな社会科見学な気持ちで地球へいらっしゃってたのか。それならこちらの事情に詳しく無いのも無理はない。)
「この星の生命体における生活様式、技術、文化とか現地調査のためにこの星とその影響関係のある範囲ほぼ全ての物体の時間を一時的に止めてるんです。現地の混乱、特にあなた方知的生命に認知されることを避けるために。……厳密には止まってはいないのですが。」
と、ノーザが僕に近づいて言った。そんなことが——。
この時、僕の脳内の点と点が線で繋がる。
いや、それを越えて面と面が辺で繋がった(?)。
そちらの事情を知り、散らかっていて曖昧だった辻褄がぴったりと合う。爽快感と共に鳥肌が立つ。
「時間を止めて調査!?、えぇえ!はぇー。」
科学の進歩は強烈。僕は普通知るはずもない秘密裏の計画に予期せず立ち会えてしまっていることがわかった。
(そりゃあ誰も宇宙人や未来人を見たことがないはずだ。こんな事を知ってしまって良かったのか?いつかどこかで何者かに暗殺されない?)
「元々は人工現実でこの星を再現して環境変化への対応とかバイオロギング等のシミュレーション調査をしていたのですが、実際その予測は表面上の見えている情報を組み合わせた推測に過ぎず、裏側の隠されているところやそれが真実かどうかなんてわからなかったそうです。なのでその答え合わせをすべくこの変哲な星で現地調査を決行。我々が幾つもの銀河を越えて遠来してきたってわけ——」
ノーザが饒舌に僕にでも分かりやすく説明してくれたところ悪いが、言い終わらないうちにストップ。
「ノーザ待ってあげて。」
「ごめんなさい、ちょっと待って、いや、これかなり情報量が多いよ嘘やん……」
僕は頭を左手で抱え、右手を開き、前に突き出した。僕たちが呑気に生活している間にもこんなプロジェクトがあったなんて……その場で耳で話を聞くのと目で文字を読むのでは理解度が変わる。今の僕にはアクションゲームの操作方法なんか比にならないくらい、過剰に覚えることが多いのだ。
情報の雪崩を浴びて、僕は呆然としてしまった。危うく話を聞こうとする意識がどこか彼方へ飛んでいくところだった。
(なるほど。そんな理由で僕はこんなことになってしまっていたのか。生きていれば不思議なこともあるもんだなぁ。)
呆気に取られていたものの概ねの筋を理解した。残ったいくつかの疑問点をかき集めてニオたちに質問してみることにする。
その一、どうして僕らの言語を話せているのか
その二、いつこの時間停止は解除されるのか
その三、どうして僕は停止せず、取り残されたのか
(——とりあえずこの三つだ)
思いついた聞きたいことはその辺りだった。
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