恩人の正体 1
「結局、ロボをどうするかは決まらなかったか」
ライラとルージャが図書室を去ってからも、ラウドはロボの傍でうーんと唸っていた。
「レイさえ、納得させれば」
「難しそうだけどね」
ただでさえ、レイは今かなり忙しいのに。リヒトの言葉に、ラウドがもう一度うーんと唸る。第三王子が亡くなり、自身の謀略の鍵となる者を失った正妃は、表向き『王の呪いが解けた』という理由を付けて集めた騎士達を元の騎士団に戻している。レイは今、王都から続々と帰還している騎士達をどう配置し直すかについてリールと協議しているらしい。
「分かってる」
遠くからのリヒトの冷静な茶々に苦く答えるラウドが何故か可笑しくて、ロボは少しだけ笑った。
そして。
「あの、ラウド。……ありがとうございます」
ベッドに横になったまま、ラウドに向かって頭を下げる。
「俺のこと、色々考えてくれて」
「いやいや」
ロボの言葉に、ラウドは例の不敵な笑みを浮かべて首を横に振った。
「こんな事になったのも、俺の所為だし」
「全部ラウドの所為、だからね」
再び、ラウドに茶々を入れたリヒトが、不意にロボの傍に腰を下ろす。何の、用だろう? 突然現れた真顔のリヒトに、ロボは正直背筋が寒くなった。何を、言われるのだろうか?
「そういえば、君の恩人のことなんだけど」
だが。全く思考に無かったことをリヒトに言われ、思わず口をぽかんと開ける。いきなり何を、言い出すのだろうか?
「おそらく、ラウドじゃないと思うよ」
「何故だ?」
ロボの問いを代弁するラウドの言葉に、リヒトはにこりと笑った。
「ラウドの所為でライラが消えかけても、ロボは消えなかった」
あっと、声を上げる。確かに、リヒトの言う通りだ。と、すると。幼いロボを助けてくれた、あの人は、一体、誰?
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