レイとリールの仲直り
「ライラ!」
副都の片隅にある戦乙女騎士団の詰所の扉を開けるなり、レイが飛び出してくる。
「良かった」
どうやら群衆の誰かが、市場での騒動を詰所まで知らせに来ていたらしい。リールからライラを受け取ってほっと胸を撫で下ろしたレイの様子に、ロボもほっと息を吐いた。とにかくこれで、任務は、……果たせたのか? レイに怒られる準備を、ロボは心の中で行った。だが。
「ありがとうと、言うべきなのか、リール」
次にレイが向き直ったのは、リールの方。
「いや」
唇を歪めたレイに、リールはあくまで平静に首を横に振った。そしてリールが、思いがけないことを口にする。
「謝らなければならないと、思っていたから」
王の病気が快方に向かっていることと、その本当の理由を、リールは、王から説明を受けた第一王子から全て聞いていた。古き国の女王であるライラが、王の命を救ったことも、全て含めて。
「今までは、古き国は新しき国と敵対するものだと、ずっと思っていた」
リールの言葉が、静かにロボの心に入り込む。
「だが、王の病を治した人を、敵だとは思いたくない」
そう思ったリールは、王を助けたライラを、自身の魔法力で以てライラの肩の痣を一時的に隠すことで救った。リールはレイにそう説明してから、くるりと踵を返し、レイに背を向けた。
「待てよ、リール」
そのリールの背に、レイが呼びかける。
「ありがとう」
レイの言葉は、最大限の優しさに満ちているように、ロボには感じられた。
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