伯父からの手紙
その日の、夕刻。
副都の片隅にある戦乙女騎士団の詰所に戻ってきたロボに、一通の手紙が待っていた。
「リールから、転送されてきたものだ」
騎士団長の執務室で、薄い封筒をロボに手渡しながら、レイが不快そうに呟く。
「君がこちらにいることを、リールは知っているそうだ」
その件に関してリールから色々言われたようだ。レイの額の皺がだいぶん増えている。端正な顔なのに、醜く見える。それが、ロボの正直な感想。あまり怒っていると、すぐに老人になってしまうな。気をつけよう。ロボはそう思いながら、封筒に書かれた宛名を見た。
「……どうした?」
レイの声が、固まったロボの身を元通りにする。
「いえ」
動揺を隠すように首を横に振ってから、ロボは封筒の宛名をもう一度見た。ロボが母と暮らしていた、あの橄欖と葡萄が連なる領地の真ん中にある屋敷の主人である、ロボの伯父からの手紙だ。何の用だろう? 一度は第三王子に捕まったがラウドが助け出し、現在はレイの母親の庇護下で暮らしているロボの母の行方を問う手紙なのだろうか? それとも、ロボの関与を知らない伯父が、母が行方不明になったと知らせてきたのだろうか? 封を開けて中を見ると、しかし、手紙の内容は、ロボの予想とは大きく違っていた。
「父親と名乗る人物が、会いに来ている。すぐに戻るように」
それが、伯父からの手紙の内容。
手紙を持つ手が、震えているのが、分かる。こんな時に。でも、……逢ってみたい。ロボはレイに一礼すると、ふらふらとレイの執務室を後にした。
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