『新しき国』の王の現状

「お父様の、お見舞いに行きたい。妹と一緒に」


 いつものように中庭で武術の真似事をしている時、不意に、第四王子がロボの服の裾を強く引っ張る。


「クロード殿下の許可を貰えば、良いのかな?」


 首を傾げながらのロボの言葉に、第四王子はにっこりと笑った。そして。


「王宮への短時間の外出なら良いだろう」


 第一王子クロードの許可が出て、ロボと、第四王子とその妹とで屋敷から徒歩すぐの王宮に向かう。


 新しき国の王都は、緩く傾斜した丘の上に建てられている。丘はぐるりと歩廊付の城壁でしっかり囲まれ、川と深い堀で守られている。その丘の頂上にあるのが、新しき国の王が住まう王宮だった。その王宮も、政務を行う為の部屋が中庭を真ん中にしてぐるりと回廊で繋がっている『表』と、それより少し高い場所にある王が寛ぐ為の『奥』に分かれていた。その奥の建物にある長い廊下を、第四王子とその妹がはしゃがないようしっかりと二人の小さな手を繋いで歩く。


「ここです」


 先導する近衛騎士が小さな扉を開けると、薬湯とは少し違うような気がする匂いがロボの鼻をくすぐった。


「お静かに願います」


 近衛騎士の言葉に頷いて、そっと、二人の子供と一緒に部屋の中に入る。王が居るにしては狭い部屋は、薄暗く、目が慣れるまでにしばらく掛かった。


「父上」


 妹の方が、部屋の大半を占める豪奢なベッドに近づき、その帳を緩く開ける。帳の向こうに見えた、干涸らびた屍のような小さな影に、ロボは胸を突かれた。


「お父様、また悪くなってる」


 第四王子の沈んだ声に、静かな怒りが湧いてくるのを感じる。古き国の女王の呪いでなくとも、この状態は酷過ぎる。これがもし、古き国の、ライラの所為ではないとしても代々の古き国の女王の所為であるとしたら……!


「父上」


 身動ぎ一つしない影に、小さな声が空しく響く。ロボは思わず下を向いた。

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