王都へと向かう道で 2
「わっ」
木々が疎らになった場所で、僅かな凹みによろめく。バランスを崩して倒れる先の地面は、見えなかった。
「ロボ!」
しっかりとした腕が、ロボの身体に巻き付く。ふわりと空中に浮かんだ気がする次の瞬間、柔らかい衝撃がロボの全身を襲った。周りに起こった土埃に思わずむせる。だが、次の瞬間、熱い手で口を覆われ、ロボの背は冷たい土に半ば強引に叩き付けられた。
「静かに、小さくなって」
囁くようなルージャの声に、頷く。土埃が薄くなって初めて、ロボは自分の身体が、ルージャに支えられるようにして崖下の僅かな凹みに有ることに気付いた。
「いたか?」
不意に響いた、野太い声に、全身が固まる。ロボ達を追ってきた、男の声だ。
「いない」
「弓は落ちてるぞ」
「落ちたふりをして逃げるのがあいつらの常套手段だ」
男達の声が遠ざかるまで、長い時間が掛かったような気が、した。
「……ふぅ」
心底安堵した調子で、ルージャがロボから手を放す。
「あいつらがバカで良かったよ」
そう言うルージャの顔が土気色になっていることに、ロボはようやく気が付いた。
「ルージャ?」
思わず、尋ねる。あまり高くないとはいえ崖から落ちたのだ。怪我をしたのだろうか? ロボの問いに、ルージャは怠そうに首を横に振った。
「あ、うん、大丈夫だ。多分、かすり傷」
ロボの方こそ、痛いところは無いのか? そう言って身体を動かしたルージャが、右足に手を当てて呻く。
「足……」
「うん、折れてなければ良いんだけど」
ルージャの右足の、膝下部分が腫れて熱を持っているのが、黒い脚絆の上からでも分かる。手当を、しなければ。そこまでは分かったが、手当の仕方を知らない。どうすれば、ロボは正直途方に暮れた。
その時。
「骨折してるね」
不意に、静かな声が割って入る。いつから、ここに? ロボが当惑する間に、小柄な影が一つロボの脇に座り、ルージャの足を調べて溜息をついた。
「しばらく、動かないで」
そう言って立ち上がった小柄な影を、まじまじと見詰める。おそらく騎士かその見習いなのだろう、左袖が少し破れている灰色の膝丈の上着を着て、ロボと同じように細身の短めの剣を一本腰に佩いている。そして、肩に掛かる濃い色の髪と、沈んだ灰色の瞳は、誰かに似ているような気がした。
ロボが見ているのに気付いたのだろう、小柄な見習い騎士の少年が、不意にロボを見、そして表情を少しだけ変える。
「だ、大丈夫だから」
一瞬怯えた目をした少年は、それでも力強くこくんと頷くと、副木を取ってくるからと言ってロボの側を離れた。
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