第34話 心の奥にわいた不安

 二百年の差って言葉でいうのは簡単だけど、もう絶対的なもんでしょ。


 現代日本の二百年前っていうと江戸時代の後半くらいかな?

 その時代の最新兵器って黒船、つまり蒸気機関で動く戦艦とかだったよね。

 歴史小説でガトリング砲が登場していたけど、あれは本当のことなのかな?


 まあどちらにせよ、現代の戦艦や戦闘機の前にはなすすべもない。

 現代兵器が圧倒するに決まっている。


 当時の武士たちがどれほどほこり高いおそらずの集団だったとしても、装備の差っていうのはひっくり返しようがない。

 装備の優劣ゆうれつを身体能力でおぎなうっていう時代はとっくの昔に終わっているんだ。


 もし現代の僕たちが未来人相手に勝てるとしたら、どんな方法だろう。

 それが月面基地を核ミサイルで破壊するってことなのか?

 でもそれは予測されちゃっているから、もうこの鏡界の施設は破壊済みだと言ってた。


 あっ、だから他の鏡界に協力を求めてきたのか。

 自分たちの鏡界だけでは手に負えないから、他の鏡界といわゆる軍事同盟を結んで対抗しようと。


 フーン……。

 でも核ミサイルなんていう一番凶悪な兵器を、どうやったら使ってくれるのかなあ。使うどころか作ることと持つことさえ世の中は批判するっていうのに。


 うーん……。

 うーん……。

 …………。


 ――――えっ!?


 ふと、僕の胸の奥に最悪の考えが浮かび上がった。


 僕だったらこの難しすぎる問題をどうやって解決するか。

 そういう視点から考えを練っていった時に、ちょっと、いやかなり悪いことを思いついてしまったのだ。


 でもまさか。

 だけどこれくらいやらないと実現不可能なんじゃ。


「ユウさん、ユウさん」

「は、はい?」


 葵さんが肩に寄りかかってきて僕は我に返った。


「今日これからどうしよっか?」

「えっ、ど、どうしよう?」


 僕に言われてもわかんないよそんな事。


「ユウさん高校生で帰宅部なんだよね~きょうはみんなに紹介する時間ないかもね」


 いやいや、帰宅部じゃないよ囲碁将棋部でしょ。

 あなたと同じ部活だったでしょ。

 僕にとっての奇跡の時間は、この人にとっては忘れちゃう程度のもんだったのかな……。


「そっかあ、六時か七時にはかえらないとダメだよねえ。

 今日はもう終わりにしてあっちの世界で遊ぼっか?」


 楽観的すぎる葵さんを、さすがに岡持さんが止める。


「いやいや、遊んでいる場合じゃねえから。呼べる奴だけでも呼んでおこうぜ」

「ここに?」

「ああ、普段はNPCで暗号通信のやり取りをするんだが、お前にはさせられないからな」

「静かで人の目を気にしなくていいというのは、良いことですね」


 ミドリコがさっきの皮肉をむしかえしてきたので、岡持さんは一瞬すごい顔になった。


「おいユウ、このロボットまじで何とかならねえのか」

「な、何で僕に」

「まあ、ちょっとな」


 葵さんのロボットなんだから葵さんに言ってほしい。

 言ってきかないから今があるんだろうけど。

 ともあれ岡持さんは空中で指をゴチャゴチャ動かす。

 仲間に連絡を取っているんだろう。

 しかし集合に時間がかかるということで、僕たちは数時間の休憩きゅうけいタイムということになった。

  

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