第30話 突然襲われるブラックアウトの恐怖
僕の
どれも
街をゆく人々も疲れた顔を
ちょっと表通りから
これはいわゆる
恐ろしいほど明確に世の中が壊れている。
ここは日本じゃない、別の国だよ!
僕は
そしてこの激情が僕なりの愛国心からくるものだと気づく。
違うと思ったんじゃない。
違うと思いたかったんだ。
日本はもっとましな国だったはずだ。
こんな
「不平等を
「政府は国民主権の原則を守れ!」
「WE WANT TO JOB(私たちに職を)!」
楽園のような特別エリアの外側で、
労働者デモってやつだ。
実際に見るのははじめてだな。
彼らはゲート付近を警護している軍服姿の外国人の前で、大声をあげて
無言無表情で直立している軍人さんたちは、見た目も服も日本人とは思えない。
彼らの足元で
『ミナサン解散してクダサーイ』
ハウンドの群れから拡大音声が流れてくる。
無線スピーカー機能なんかも地味にあるようだ。
『ミナサンのしていることは《ゴ近所迷惑》デース、解散してクダサーイ』
「まずいな、離れるぞ」
岡持さんが僕の手を引いて、急ぎその場を立ち去ろうとし始めた。
「いま巻き込まれるわけにはいかねえんだ!」
「そ、そうですか……?」
意外なことに岡持さんは少しおびえているようだった。
グローブみたいにデカくてゴツい彼の手が
葵さんとミドリコもまったく
そんなに危険なのかなあ、あのデモ行進って。
僕は手を引かれてしかたなく前に進む。
「不平等を
大人たちは軍の放送を無視してデモを続けている。
正直、ご近所迷惑だという軍人さんたちの主張も間違ってはいないような。
だが次の瞬間。
シーン……。
突然の
「あれっ?」
ふり返った僕が見たものは、糸が切れた
幸か不幸か倒れなかった人たちは、自分の仲間たちが死んだように動かなくなったのをみて、悲鳴を上げながら逃げていく。
僕は
「あ、あれ、岡持さん、あれ!」
「さっき言っただろ!
何も見えねえ、何もできねえ、あれがブラックアウトだ!」
NPCによる
「で、でも!
あの人たちそんなにひどい事してませんよね!?」
でも人に暴力も振るわない。
物も壊さない。
他の国みたいに
それなのにいきなりあんな乱暴な手段を使うなんて!
「だから言ったろ!」
岡持さんは前を向いたまま、獣がうなるように言った。
「あいつらは俺たちなんて人間だと思っちゃいねえんだよ!」
倒れた人々は別の作業ロボットによって、カーキ色の装甲車みたいなものに運び込まれていく。
ぐったりと力なく横たわる人々はまるで死体のよう。
表情は無く、目は半開き、口からはよだれを流したまま。
見てはいけない恐ろしいものを見てしまったような気がして、僕は目をそらしてしまった。
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