第24話 オポジットミラー・トランスポーター

「俺たちとはまったく関係のない連中だ!

 何でもいいから暴れられればいいっていう、イカレた連中がやらかした事なんだ!」

「そ、そうですか」


 誤解ならば良かった。

 いや良くはないけど不幸中の幸い。


「それじゃあ、僕に何ができるんでしょうか。

 できるかぎりの事はしますよ」


 岡持さんは僕の言葉に目をせる。


「すまない、おんにきる。

 とりあえず君の自室を逃走ルートに使わせてもらおうと思う。

 ミドリコからもう準備は完了していると報告を受けているが」 

「準備だけではなく、試運転も完了しております」


 試運転?

 はて何のことだろう?


「逃走ルートっていうと、つまり避難場所という事ですね」

「いや、ちょっとニュアンスが違う。

 何らかのトラブルがあった時、君の部屋に飛び込むことにするからビックリしないでくれ、ということなんだが」

「それなにか違うんですか」


 僕は首をひねった。

 僕の言っている事と岡持さんの言っている事って、同じ意味だよね?


 話がわからない僕を見て、ミドリコが顔をヌッと突っ込んできた。


「わっ」

「岡持のお粗末そまつな発言を正確に理解するためには、OMTという二十三世紀の機械について理解する必要があります」

「オーエムティー?」

「はい。オポジット・ミラー・トランスポーターのりゃくです。

 日本語では無限むげん鏡界きょうかい移動装置と意訳されております」


 オポジットミラーって、たしかわせかがみのことだ。

 それと鏡界という言葉、さっきから何度か聞かされている。


「合わせ鏡の向こう側にある世界から来たという説明は記憶していますね?

 さすがにそれは忘却ぼうきゃくしておりませんね?」

「お、覚えているよ、それくらい」

「本当ですね?

 見栄みえを張っているのではありませんね?」

「そういうのもう要らないから!

 僕、そういうプレイに興味ないから普通にしゃべってよ!」

「そうですか、遠慮えんりょしなくても良いのですよ?」


 遠慮なんかしてねーから!


「OMTとは合わせ鏡の向こう側に多数存在する世界、『鏡界』を行き来する機械とその技術体系のことです。

 我々はOMTの技術を応用することで瞬間移動に近しい移動手段を有しております。

 昨夜、貴方の部屋で大音を立てて訪問した理由がそれです」

「あっ、あのガラスが割れる音!」


 昨夜二回聞いた、ガラスが派手に割れる大音。

 あれはそのOMTとかいうものを使った音だったのか。


「その通りです。

 OMTを使用して他の適当な鏡界に移り、再びこの鏡界に戻ってくることで間接的な瞬間移動が可能になります。

 貴方の部屋にはすでに使用地点とするべく機器を設置しておりますので、さっそく今から正式に逃走時の脱出口として登録させていただきます」


「えっ、機器の設置?

 そんなことしたっけ?」

「あなたが気絶してアオイに起こされるまでの間に、すでに設置完了しておりました」


 こいつ、勝手なことを。

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