第11話 ひな&ひな、謎のスキンシップ

「やばっ、超可愛いし、あたしはやっぱり超絶美少女だーっ!」

「うひいいいい! ナゾの美女がいきなり出現! どうなるあたしーっ!?」


 同じ声、同じノリで騒ぐ二人の日向ひなたあおい

 はた目にはやはり姉妹にしか見えない。

 ちょっと微笑ほほえましい光景ですらあったが、僕の心は破滅のピンチだ。


「あ、あ、あ……。

 終わりだ、もうなにもかも終わりだ……」

「何が終わるというのでしょうか」


 のんびりと後ろからついてきていたミドリコが、僕のそばにやって来た。


「いやだって、過去と未来が遭遇そうぐうしたら、タイムパラドックスで世界が壊れて……」


 僕の言葉にミドリコは目を細め、やれやれといった表情でフーッとため息をついた。

 そのフーッていう吐息といきが鼻先に当たって、僕は顔をしかめた。

 さすがにイラっときたぞ今の。


「その発言の分析ぶんせきが完了いたしました。

 貴方は先ほどのわたくしの説明をごく低レベルでしか理解できなかったようですね」

「え」


「あそこにいる二人の葵は、あくまでも違う世界に存在している別の人間です。

 サイエンス・フィクションにおけるタイムパラドクス、過去改変による矛盾の発生など起こるはずがありません」


「だ、大丈夫なの?」

「問題ありません。むしろ問題なのはこれしきの理解すら得られなかった貴方の知能のほうです」

「……ホントにひと言多いねキミ」

「申し訳ありません、製作者の趣味しゅみです」


 まったく。

 気を取りなおして二人の日向葵の様子を見ると、なぜか彼女たちは抱き合って身体をであっていた。


「よーしよしよしよし、あたしはやっぱりかわいいね~」

「よ、よーしよしよしよし、お姉さんもなんかあたしに似てかわいいね~」


 まるで動物でもでているかのような。


「「よーしよしよしよしよし……」」


 ……何やってんだあれ?


 意味不明なスキンシップをつづける二人の横を通り抜けて、ひなちゃんと一緒にいた女生徒が僕に近づいてきた。


 ストレートの黒髪を背中までのばした、正統派な感じの子。

 制服のリボンの色で確認すると、ひなちゃんと同じ一年生。

 もしかしてひなちゃんと一緒にいたバスケ部の子かな?


 女の子はいちおう先輩である僕に一回頭を下げて、話しかけてきた。


「あの、さっき正門でお会いした先輩ですよね?」

「あっはい、そうです」

 

 やはり女子バスケ部の子だった。


「あの人ってひなの家族かなにかですか。

 すごく似ていますよね」

「え、えーとね……」


 何と説明したものやら。

 僕だって『未来からきた』なんてトンデモ話を聞かされたのは、ほんの小一時間前のことなのだ。


「さっき先輩はあの人と腕を組んでいましたね」


 少女の目つきがけわしい。


二股ふたまたかけていたんですか、それも姉妹でなんて、汚らわしい!」

「えっ、ち、違うよ!」


 僕はとっさにミドリコに助けを求めた。

 だが人型ロボは沈黙無表情。


「何が違うっていうんですか、私のひなに何するつもりだったんですか!」


 なんだ『私の』って。

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