第9話
私はそれから学校に行けるようになった。
一緒にいてくれていた女子たちは、自分たちのせいで私が不登校になったと思ったらしく、すごく謝られた。でもそうじゃないことをしっかり伝えると、深く安堵したような表情をしていた。
しかし、余命宣告のことは言えなかった。
そのことから考えても、彼は私にとって彼は何よりも特別な存在だということが分かる。
彼も私もそれぞれの生活があり、それぞれの友達もいる。
それでも2人が疎遠になることはなかった。
クラスの人達も気づいているだろう。
私達の関係に。
煽ってくる人たちもいるが、別に気にしないことにしていた。
私が彼の幸せの一部を作ることができるだけで嬉しかったから。
私が仲がいい人たちや、彼の友達は気を遣って私達の2人の時間をたくさん作ってくれた。
今日は、あの人がかつておばあさんと一緒に住んでいたという場所に来ていた。
私の体調を気にして、荷物は彼は全部持ってくれていた。
そこには…何もなかった。
更地だった。
元から何もなかったかのように。
彼は口を開けて何か言おうとしながら震えていた。
しばらくして我に返った彼が、私の方を向きなおった。
その目は…泣いていた。
私は彼を慰めることだけが自分の仕事じゃないと思った。
「前に…、進めるね?」
彼は不思議そうな目をしていた。
私は続ける。
「これは、おばあさんからのメッセージだよ。
前に進めって。」
「前に…進む?」
彼は真っ赤になった目でこっちを見ていた。
私は続ける。
「貴方を捨てた両親に会いにいくの」
彼にとっての幸せは、やっぱり愛する家族といることだと思う。
今、私が家族みたいなものだけど、私はもうすぐ死ぬ。
だから彼を支えてくれる家族を探してあげたい。
きっとそれがおばあさんにとって一番嬉しいことだと思う。
彼はしばらくうつむいて口を開かなかった。
でも、覚悟を決めたような顔をゆっくりと、でも力強くあげた。
「うん」
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