第6話
図書室での出来事をきっかけに私と岡本くんとの距離がすごく縮んだ。
昼休みには、図書室だけでなく中庭にも一緒に行くようになった。
今日は、中庭に来ていた。
中庭にはきれいな花とか、リラックスできる植物がいっぱいある。
「この花、知ってる?」
唐突に質問してきた。
彼の細い指が指しているのはピンクの花だった。
「うーん、知らないかな」
岡本くんは知っているのだろうか。多分、あまり有名ではないと思うが。
「ペンタスっていうんだよ」
ぺんたす…?
聞いたことがない単語だ。
「花言葉が希望が叶う、なんだよ」
希望…か。
私も希望が叶うことがあるのかな…、残り少ない人生の中で。
岡本くんは微笑みながら言った。
「僕達とは正反対の花だよね」
本当にそうだろうか。
私達の不幸は一見取り返しのつかないものに感じる。
しかし実はそうではないような気がしてきた。
「そうでもないんじゃないかな。
だって、岡本くんにとって生きている意味っていうのは、ご両親に愛されること、必要とされることだけじゃないと思う。他の人でも良いでじゃないかな。
…私は貴方を必要としている。
だから、貴方は生きていなくてはいけない人。
私はそう思う」
彼は黙っていた。
でもそれがマイナスの感情による沈黙ではないという確信が、何故か私にはあった。
私は続ける。
「もっと自身を持って」
彼の目に希望の光が宿った。
どこまでも綺麗で純粋な光が。
私は彼を救うことが出来た。
私によって解放された彼。
私はどこまでも彼の幸せを願った。
「ありがとう」
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