第2話
その子は私の隣の席に座った。
その子が席に座ってもまだ笑っている人もいっぱいいて、席についてもまだ恥ずかしそうだった。
そんな落ち着きない状態で中学校最初の朝の会は終わった。さっきの触れればきれしまいそうな空気とは違った気まずさのある空気でさっきより居心地が悪い。
次は入学式だ。
みんなぞろぞろと廊下に出ていく。しかし、私の隣の席の子は動こうとしない。さっき遅刻して笑いものにされたのがよっぽど恥ずかしかったのだろう、皮膚が破けそうなほどに唇を噛んでうつむいている。
とりあえず話しかけてみようかな。
そう思って話しかけてみた。
「はじめまして、私、大林心愛って言います。えっと、あなたのお名前は?」
よくありがちなはじめまして挨拶だった。
…はず。
「…大林さん?え、えっと…は、はじめまして…」
やばい変な人って思われちゃったかな…。それともめっちゃ恥ずかしがり屋なのかな。
できれば後者だといいな。
「えっと、岡本樹…です」
岡本くんっていうんだ。
「よろしくね!」
できるだけ明るく振る舞った。
けれど、遅刻したことは口に出さなかった。
慰めた方が良かったのかもしれないが、そんなことをしても傷つけてしまうだけかもしれないと思っったので今はやめておくことにした。
私がそのことを気にしていないことは態度で分かってもらえただろう。
相変わらず喋り方はたどたどしかったが、少し気分が晴れて表情が柔らかくなったような気がしたのは、見間違いだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます