同じ昨日と違う明日

白城香恋

第1話

 今日は中学の入学式だった。


 私の名前は大林心愛おおばやしここな。普通の、なりたての希望でいっぱいの中学1年生…に見えるけど実は違う。


 実は私は難病を患っていて余命宣告もされている。

 こんなに若くして死ぬと聞いて始めは怖かったしショックだったけど、最近はその現実を受け入れることができるようになってきた(というか受け入れていると信じ込ませていた)。


 だけど、こんなに早く死ぬのになんで私は今まで生きてきたんだろうって最近はよく考える。誰かのためなのか、それとも自分のためなのか。それとも意味なんてなかったのか。それもわからないし、別に答えが出るわけでもないからまあ残りの人生を精一杯楽しもうと思う。


 さて、学校はここか…。いっぱい人いるな。目が回りそう。友達できるといいな。

 私は教室に着いた。もうクラスの大半の人は登校していた。


 あ、先生が来た。あの人が担任の先生か。

 「皆さん、席についてください。」

 みんなが席に戻っていく。私の隣は誰かな…。ってあれ?私の隣の人来ないんだけど。


 「それじゃあ皆さん、おはようございます!」

 「…おはようございます」

 先生の挨拶とは対照的な暗い挨拶が聞こえてきた。朝の会の始まりみたい。朝の会が始まっても私の隣の席はからっぽのままだった。


 「私の名前は坂口真理です。よろしくおねがいします!」

 先生の自己紹介があった。みんな入学したてで緊張していて、触れたら切れてしまいそうなくらい空気だったので、明るい口調を心がけたのだろう、とても元気な挨拶だった。しかしそれで空気が和らぐことはなかった。でも先生の気遣いはすごいよく分かった。

 優しそうな先生が担任でよかった。


 そんなことを考えていると、後ろのドアが空いて一人の男子が入ってきた。

 大慌てで来たのだろう、服装は乱れていて鞄もだらしなく背負っていた。

 あまりの面白い遅刻仕方にみんな大笑い。でも私はなぜか笑う気になれなかった。


 その子は私の隣の席に座った。

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