第2話

母親の欲望は、拒まれれば拒まれる程、荒れ狂う熱をもつらしい。

恋人依存症ってやつなのかな。


私は12時過ぎに家に帰ってきた母親を、呆れたような恨んでいるような目で見ているのに、その目線に気が付かない母親は何事もないかのように、すずしげにそこに立っている。


母親からは、また違う香水の匂いがする。

母親は、会う男によって匂いを変えている。

この匂いは、始めてだな。

また、男を作ったのか。

ほんとに、呆れる。


奔放っていえば、少しはマシに聞こえるけど、母親はそういう人だから。

他にもたくさん男がいるんでしょ。


そして帰ってきた途端、風呂に入り、着替え、また違うパフュームを纏った母親。

私の方なんて、これっぽっちも見ずに、用事があると去ったドア。

やり場のない怒りからドアをひとつ殴った。



私って、変な運命を持っているみたい。

始めて好きになった人は、母親みたいな人だった。


どうせ、傷つくだけなら好きになってはいけない。

わかってるのに。


彼の告白を受けてしまった私は馬鹿だ。


「ねぇ、今、誰を抱いているの?」

「ひとりで寝てるさ。」

そんな、会話を想像する私はどうかしている。


のみこまれてく。

闇の中にある、得体のしれない何かへと。


静かな部屋には、外の雨音が響いている。

おかしいよね。

私は、こんなにも君を欲っしている。


なのに、君はいなくて。

衝動をあおる雨粒が、窓に爪をたてる。

ただ、ひとり胸が痛くて。

心がころげまわる。


なくなりそうな愛ほど、人を壊せるくらいに美しい。


絶望はひたひたと、ゆっくりとやってくる。

いつからか 嘘とわかる嘘。

君は上手になったよね。


嫉妬という化け物を、胸の中で飼いならしてみる。

身体じゃなくて、魂でそれを求めてしまう。


何がそうさせたの。

わからない。


そんなヤツやめとけと、心の中の誰かが言うけど、惚れてる。


いつも、雨が降っている。

ほら、こんなにも君が欲しくて。


ドシャ降りの心。


やっぱり、誰も愛しちゃいけない。

愛は1秒ごとに痛みを増す。

痛みはちょっとずつ、深くなるから。

悪いウワサくらいじゃ、ただのさびしい女にもなれない。

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