守ってあげたい
朝御飯を食べ終わって、先方の会社に出向き打ち合わせを終えた俺達は、お昼ご飯を食べるのに歩いていた。
「また、来週ですね。」
「そうだな。」
いつも、昼までの打ち合わせだ。
「その頃は、由紀斗さんは奥さんと別れてますね」
俺は、そう言って頬をかいた。
「そうだといいけどな」
先輩は、寂しそうな顔をした。
俺は、先輩を守ってあげたい。
愛されなくてもいい。
それでも、先輩を支えてあげたいと強く思った。
「何、食べますか?」
「ラーメン食べたいな」
「わかりました。ラーメン食べましょう」
スマホで検索して、口コミの高いラーメン屋さんに二人で行った。
「やっぱり豚骨ラーメンうまかったですね。」
「ああ、美味しかった。」
「何か、不安あるんですか?さっきから、浮かない顔してますよ」
先輩は、俺をジッーと見つめる。
「千尋、明日、
「何で、そんな事になってんですか?」
「わからない。向こうから言ってきた。」
先輩は、どうしていいかわからない表情を浮かべていた。
「由紀斗さん、大丈夫ですよ。心配しなくても…。もし、辛くなったら俺が近所まで行きますよ。スマホ、貸してください」
「ああ」
俺は、先輩とメッセージアプリの友達になった。
「いつでも、メッセージ下さい」
「千尋、ありがとう」
先輩が笑ってくれる。
その笑顔が、見れる為なら俺は、何だってしてあげたい。
「ホテル、戻りますか?」
そう言った俺の腕を先輩は引っ張った。
「千尋、今日は何か買ってホテルで飲まないか?」
「いいですね」
スーパーに寄って、惣菜やワインやビールや乾きものを買った。
俺は、久しぶりに恋をしたんだと思う。
いつの間にか、恋愛をゲームのようにする事しか出来なくなった俺にとって、先輩は珍しいタイプだった。
お会計を先輩が払った。
「俺が、払いましたよ。」
「大丈夫だ。俺だって、払えるよ」
そう言って商品を袋につめてる。
先輩の隣に並んでいるだけで、俺は、幸せをもらえている気がした。
先輩と出会ったのは、ちょうど10年前だったっけ…。
[大宮、資料よろしく]
[わかりました。]
[市木君だっけ?]
[はい]
[
[はい]
ブラック企業らしいと言われた、この会社で長く働くつもりはなかった。
30目前に、そろそろ転職しようかな?なんて思っていた俺に、先輩は話しかけてきた。
この部署に移動させられた時は、正直嫌だったよ。出張が多い事で有名だったから…。
でも、何故かな。
先輩とペアで時々出張に行く日だけは、ずっと嬉しかった。
いつペアが回ってくるかワクワクしていた。
先月、独身だった。
竜ヶ崎が結婚をして、俺は部長に呼ばれた。
「これからの出張は、大宮と市木に頼みたいが大丈夫か?」
「はい」
「大宮は、子なしだし。市木は、独身だから、丁度いいだろ?よろしくな」
何が、丁度いいのだろうかと思った。
でも、逆らう事は出来なかった。
どれだけ、理不尽な目に合おうと逆らえないのだ。
先輩と並んで歩く。
「部長にパワハラされてんですよね?」
俺の言葉に先輩は、驚いた顔をした。
「ハラスメントを言えばきりがないよ。ただ、部長はお見合いを蹴った事を根に持ってるな」
先輩は、そう言って笑った。
ホテルについて、フロントで鍵をもらった。
最終日もデラックスにして、先輩と朝まで過ごしたいなー。
何て考えてるなんて、馬鹿だな俺
「行きましょう。」
「部屋を変えてもらってるから待ってくれ」
「えっ?」
「こちらになりますね。後で、追加料金のご請求になります。」
「ありがとうございます」
そう言って、先輩は歩いていく。
「由紀斗さん?」
「同じ階で開いていてよかった。荷物を移動させたら、鍵は俺が持っていく。」
「わかりました。」
俺は、部屋に戻って荷物をつめた。
向かいから、先輩が出てきた。
スーツケースを転がして、部屋にはいる。
「忘れものは大丈夫か?」
「はい」
「じゃあ、待っててくれ。」
そう言われて、鍵を渡した。
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