千尋を連れて行く
「千尋、飲みすぎだ」
俺は、お会計を払った。
千尋を連れて帰る。
身長差があって、うまくいかないが何とかホテルに連れて帰ってきた。
「はあー。全体重かけられたら重いよ」
「由紀斗さん」
千尋は、俺に抱きついてくる。
「やめろ、部屋戻るから」
「辛かったですね」
千尋に腕を引っ張られて、また抱き締められた。
「千尋、離してくれ」
「由紀斗さんも奥さんも、俺が守ります。二人とも、俺が抱き締めてあげます。」
「何言ってんだよ。」
「だから、大丈夫ですよ。これからは、幸せで…」
って、寝たのかよ。
俺は、千尋を寝かせた。
スーツじゃなくてよかったよ。
脱がせなきゃいけなかったから…
じゃあ、部屋に戻るわ
俺は、千尋を置いて部屋に戻った。
スマホを開くと
[出張から帰ってきたら、会わせたい人がいます。]
そうはいっていた。
[わかった。]
俺は、梨寿に返信した。
この10年間のうちの半分は、子宝に恵まれない事を嘆いたよな。
俺も梨寿も、欲しかったよな子供…。
だけど、神様は俺達を選んでくれなかったんだよな。
俺も梨寿も、いい親にはなれないって思われちゃったかな?
スマホの中の写真は、梨寿の作ってくれた料理や二人で一緒に行った場所の写真で
一番の親友、一番の理解者、だって思ってたのは俺だけだったのかな?
この先もずっと俺達の結婚生活は続いてくって信じていたよ。
5年前に大喧嘩した日に、別れていた方がよかったのかな?
あの時、俺は梨寿をどうしても、失いたくなくて別れたいなら勝手に出て行ってくれと言った。
離婚届には、サインはしないからと言った。
身勝手かもしれないけれど、梨寿と離れたくなかった。
今だってそうだ。
本当は、一緒にいたい。
でも、梨寿の未来の為には、我儘なんて言ってたら駄目だ。
もうお互いに
梨寿にとって、ラストチャンスになるかも知れない。
ならば、ちゃんとお別れをしなければいけない。
そう思って俺は、千尋に抱かれたのかも知れない。
頭がフワフワして、いっきに酔いが回って眠ってしまった。
「うーん、頭が痛い」
目覚めた俺は、シャワーに入る。
明日は、帰宅だ。
シャワーからあがって、スーツに着替えた。
部屋から出ると、千尋が待っていた。
「由紀斗さん、おはようございます。」
「呼べばよかったのに」
「いえ、待ってるのがなんかよかったんで」
そう言って千尋は笑った。
「行こうか」
「はい」
俺は、千尋と並んで歩く。
フロントに鍵を預けた。
「昨日も、飲みすぎて頭が痛いです。」
「俺もだ。」
二人で、顔を見合わせて笑った。
コンビニで、おにぎりと味噌汁とコーヒーを買った。
昨日と同じ近くの公園で食べる。
「由紀斗さんは、明日直帰したら話し合いですか?」
「話し合いというかサインするだけだ。」
「今日で終わって、明日は朝から帰れますよね」
「両親に会いに行って、離婚の話をしてこようと思っている。」
「認めてもらえるといいですね?」
「わからない。無理かもしれない。梨寿は、両親を早くに亡くしていてね。俺の両親は、その事が気にくわなかった。部長の親戚との縁談も知っていたから、どこの馬の骨かわからない梨寿を許さなかった。」
そう言って、味噌汁を飲んだ。
身体中に染み渡って、ホッとする。
「子供ができない事は?」
「昨年やっと諦めてもらえた。梨寿に原因があると散々言ってきたけれど…。俺は、違うと答えた。不妊は、一人だけの問題なわけがない。俺自身も原因があるんだよ。だけど、両親はそれはないと否定するばかりでね。」
俺は、おにぎりを食べる。
「自分の子供がそんなはずないって親なら誰だって思いますよ。」
「それが、梨寿を苦しめたんだよ」
俺は、味噌汁を飲み干した。
「由紀斗さん、自分を責めないで下さい」
「ありがとう」
千尋の優しさにホッとする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます