第6話
挨拶もすませて、無理矢理な感じにはなったものの、一応僕と御堂は結婚をすることになり、その日のうちに婚姻届だけは出した帰りに、先生が本当に突然、学校に向かう途中の大きな家、そこの前に車を停車させた。
なんでここに? 僕は意味がわからなくて疑問符が浮かぶばかりだ。
そんな僕を見て先生が「結婚したんだから、2人に僕からプレゼントでーす!」と家を貰った。
あまりにも現実を受け入れるのは難しくて、家をプレゼントされるのも意味がわからないし。
呆然と立ち尽くしてると先生がニンマリ笑いながら口を開いた。
「驚いてる、驚いてる、僕から2人へのプレゼントだよ〜? 結婚したんだし、寮で生活するより、2人で生活したほうが色々といいんじゃないかって思ってね。番で夫婦の2人が同じ寮にいると気まずく感じる子達もでるだろうからさ」
「ああー……、そっか、考えたことなかったです」
「んもう! 朝陽かたいよ、口調! 僕のことはパパって呼んで甘えてくれていいんだからね」
「……善処します」
すぐに甘えるのは無理だから、とりあえず、気持ち的には頑張ろうと伝えたけど、間島先生は納得してない様子だった。
そして、間島先生が僕達2人に向かって、2人の愛の巣だよと茶化してきたから、御堂が遠慮なく顔面ストレートしようとして避けられてた。
「なんで避けるんですか」
「いやいや、避けるよね! 僕のこの美貌が傷ついたら、悲しむ子がいるからね? やめて、僕の大事な顔なの!」
「響さんなら、わかってくれます。アンタがふざけるから悪いんですから」
どうやら、御堂は間島先生の相手を知ってるらしい。
その言葉に間島先生が反論していた。
「そんなわけないでしょ! 響だけは僕の味方のはずだからね!」
自信満々に言ってるのに表情は自信なさげだから、うん、間島先生まさかの奥さんに尻に敷かれてるタイプだ。
意外な一面を知って、ちょっとだけ可愛いなって、ほっこりしてたら、また僕を巻き込んできた。
「朝陽、ひどくない? 旦那になんとか言ってやってよ! アタシ絶対響に愛されてるもん! 世界中の皆が敵になってもあの子だけはアタシの味方なの!」
そう言って抱きついてくる先生。まさかのオネエ口調に僕は脳の処理が追いつかず、困惑してると七海先生が車から降りてきて、間島先生を回収してくれた。
「ほら、新婚さんの邪魔をいつまでもしてるんじゃないよ」
「ええ! 朝陽達ともっと一緒にいたい! やだやだ!」
「響ちゃんに言いつけようか? 君に会うより、息子と一緒の方が楽しいらしいよって」
「はぁ!? 響といるのが1番ですけど? 今すぐ帰る!」
七海先生に煽られて間島先生が車に乗り込んでから、「あっ、そうだ、はいこれ!」と、なにやら投げてきてキャッチして受け取ると鍵だった。
「それ、この家の鍵だから」
そう言って間島先生は七海先生に「早く乗れよ、置いていくぞ」と促して、乗るのを確認してから車を走らせて、騒ぐだけ騒いで帰って行った。
残された僕と御堂は、お互いに顔を見合わせて吹き出した。
「ぷっ、あははっ、間島先生嵐みたいだったね」
「そうだな、あの人はああいうところあるからな」
久しぶりに自然と笑えた気がした。
笑いあったあと、置いてけぼりされたわけだし、外にいても仕方ないし、諦めて僕達は貰った鍵で中に入ることにした。
中に入ってみると家具一式は揃ってるし、寝室には大きな……たぶん、キングサイズ? なベッド、その上にはご丁寧にイエスノー枕まで置かれてた。
それを見た御堂が枕を掴んで苛立ったように壁にぶつけてるのを見て、僕はそれがなんだかおかしくて笑う。
「あははっ、そんなに怒らなくてもいいじゃん」
「あのな、こういう悪ふざけを許してると、あの人はドンドンエスカレートする可能性だってある。なんせ、朝陽を養子にしたわけだから、あんなんでも父親だからな、父親ムーブとかウザくなるぞ?」
父親ムーブ……、脳内に溢れた間島先生のお義父さんぶって、あれやそれや口出してくる姿に、ウンザリだとばかりにため息が自然ともれる。
「嫌だろう? だから、ハッキリと抗議するべきだ」
「そうだね、そのほうがいいかも」
僕も大きく頷いて納得する。間島先生に色々と乱されるのはゴメンだし。
色々とお世話になったからと言って、それとこれは別だ。
ただ、一番の問題は他の部屋も見たからわかるけど、ベッドがここにしかない。
どうやら、間島先生は僕と御堂に一緒に寝ろってことのようだ。御堂がなにやら顎に指をそえて考え事をした思ったら僕のことを真剣な眼差しで見てきた。
「朝陽は俺と一緒に寝るの嫌か?」
「え、い、嫌じゃないよ」
うっかり本音がまろびでたけど、よかったのかな? 気持ち悪くないかな? 御堂の反応が怖くて俯いてると頭をわしゃわしゃと乱暴な手つきで撫でられる。
「よかった、嫌がられたらどうするか考えなきゃならなかったしな」
「……嫌じゃないの?」
「なんで、嫌なんだよ、それこそありえねぇだろ」
ありえないって断言されて、口元が緩むそうになるのをグッとこらえて顔を上げた。
「それもそっか、僕達友達だもんね」
自分で言ってて傷つくなよ、顔に出たらどうするんだ! 自分に叱咤して、笑顔を向けた。
そしたら、御堂の表情が一瞬だけ曇ったような気がして、胸がざわつく。
え? 今の表情なんだろ。
それは本当に一瞬で次の瞬間には笑顔で「そうだな」って返ってきたから、僕の気のせいだったのかな?
とりあえず、一緒に寝ること、なにかあったら御堂に言うこと。
妊娠は僕1人の問題じゃなくて、2人の問題だと言われた。
今日はもう色々とあって、お互いに疲れてるから、デリバリー頼んで夕飯を食べて、早く寝ることにした。
さてさて、間島先生から家をもらって、学生の身でありながら僕達は一軒家で一人暮らしをはじめたわけだが……。
それが、予想を遥かに上回るというか、なんていうか、御堂との暮らしは快適だった。
正直緊張して、それどころじゃないかも? なんて乙女思考な考えをしていた僕を殴ってやりたいくらいに。
御堂は僕の体調をすぐ気遣ってくれるし、僕が少しでも様子がおかしいとそばにだっていてくれる。
御堂ってこんなにスパダリだったなんて知らなかった。
友達として一緒にいる時は全然知らない一面を知れて嬉しいと思う反面、知りたくなかったという気持ちもある。
その優しさが僕への愛情だと勘違いしてしまいそうで、一方的に募る御堂への愛がいつか爆発してしまわないか気が気じゃない。
僕から告白されたら御堂は優しいから好きになる努力はしてくれるかもしれない。
それが嫌だ、せめて気持ちだけは心だけは自由でいて欲しい。
僕に縛られないで他に番作っても恋人作ってもいいとさえ思ってる。それを本人に言うと怒られるから言えないけど。
あとは一緒に住み始めて1番嫌なのはまだ本当の番じゃないのにそれでも御堂のそばにいると精神的には落ち着く自分が嫌いでしかたない。
こんなの僕じゃないとも思う。こんなに僕は脆かったのかと絶望すら覚えた。
それに困ったことも増えた。自分といると僕が落ち着くと気づいた御堂によって、毎晩添い寝されてること。
一緒に寝てはいたけど、キングサイズだから、端と端で寝てたのに、今じゃ僕は今御堂の腕の中で眠るという幸せだけれど、どうしようもなく虚しい思いをする羽目になった。
この腕をちゃんと離すことをできるんだろうか。御堂に本当に大切な人ができたときに……。
御堂と一緒に寝る幸せをかみ締めながら、いつかくる終わりの日にジクジクと胸が締め付けられていた。
幸せな生活が続けば僕達の間に責任以外に愛情がちゃんとあると勘違いしてしまいそうになる。
僕達の間にある絆はお腹の子供に対する責任だけで愛し合ってるわけじゃない。
それを忘れないように気を引き締めておかないと、うっかり御堂に好きだとか愛してるって伝えそうになってしまいそうだった。
それくらい御堂との生活は甘やかされ大事にされていた。
今日も僕は自分に言い聞かせて、まぶたを閉じる。
御堂に好きな人ができるまでの間だから、今だけは御堂に甘えるのを許してください。
運命だった僕らの話 REN @souma_25
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