コマリン検証
☆ † ♪ ∞
[二〇××年 某月某日]
[午後四時三九分]
[公立
「コマリ~~~~~ン検証~~~~~!」
「「ウェ~~~~~イ!」」
放課後、唐突に謎の検証の開始がマユナによって宣言された。
同調しているのはジュリとジュン――いつもの二人。
「……なにするつもりだお前ら」
唯一、確実にコマリが巻き込まれることを直感したランセはじとりとマユナ達をにらみつける。
「説明しよう! コマリン検証とは! コマリンと遊ぶにあたって一体どこまでの行為が許されるのか、実際にやってみてコマリンにとってOKかNGか判別検証していく作業である!」
「……そんなの解るのか?」
ドヤ顔で検証内容を語るマユナから、自分の席に座ったままのコマリに視線を移すランセ。
「そのへんはね、アマネちゃんが協力してくれます」
「うむ。脳波の測定は任せろ」
言いながら、アマネはスマートフォンのような端末をてしてしと操作していた。
「表情に出なければ起伏もほとんどないのだが……コマリに感情が全くないという訳ではないのでな。今まであまり気に留めていなかったが、コマリの
「甘くておいしいものとか食べさせると、実はちょ~~~~~っとだけ喜んでたりするんだよね。ランセちゃん知らなかったでしょ」
「え、そうなのか?」
マユナから意外な事実を聞かされ、すこしだけ目を丸くするランセ。
その事実に安心すると同時に、コマリに対してどこか人ならぬ印象を抱いていた己を恥じた。
「よーしじゃあさっそく始めよーか! ヒダリー!」
「ブラシー」
マユナに応じ、一番手としてジュンがコマリのポニーテールに優しくブラシを通していく。
「判定は!?」
きっ、と素早くアマネに向き直るマユナ。
言われて、アマネは端末の画面とコマリの表情を見比べた。
「うむ……反応は無いな」
「えーと、ブラシで髪をとかしてあげるのはOKと……」
「……検証内容がささやかというかしょうもなさすぎないか?」
アマネに告げられた結果をメモ帳に書き留めるマユナに、ランセは肩を落とした。
「じゃあ次はウチな! おらー! コマパイ一番しぼりじゃー!」
もみゅ、と背後からコマリの胸を揉みあげるジュリ。
しかしコマリとアマネの表情は変わらない。
「これも……反応は無いな」
「マジか! じゃーコマパイ揉み
「ダメに決まってるだろ」
「あべぁーーーーーーーーーーーーーーー!!」
検証を口実としてコマリにセクハラしたジュリは、制裁としてランセによってその頬をつねりあげられた。
仮にコマリが許しても道徳が許さなかった。
「それじゃあ次はお姉ちゃんね! えーと……今日のコマリンのぱんつは何色かなゲヒヒボァーーーーーーーーーーーーーっ!?」
コマリのスカートの中を
コマリが許すか許さないか以前に、誰がどう見てもアウトであった。
――そんなノリで、肩揉みだとか、あやとりだとか、髪型を変えてみるとか、コマリに対して様々なアクションをしかけ、その都度脳波に反応があるか検証を重ねていくマユナ達。
検証はおよそ一時間続いたが――コマリがなんらかの反応を示したことはついぞなかった。
「……ここまで好き
気の毒そうな顔をしながらも、むにむにとコマリの頬をいじるジュリ。ジュンはコマリの爪にマニキュアを丁寧に塗っていた。
「むう……ある程度は覚悟していたが、ここまで反応がないとは」
「そーだねー……コマリンのこと、もうすこし知りたいなって思ってたんだけど……」
検証結果が想定以下だったことに落胆するアマネとマユナ。
「甘くておいしいものには反応したのに…………………………あっ」
「む、どうした?」
「ちょっとひらめいたぜ! 待ってて!」
ふと天啓を得たのか、マユナは大急ぎで教室を出ていった。
五分もしない内に戻ってきたマユナの手に握られていたのは――
――ボス無糖ブラック。
校内の自販機で売っている缶コーヒーであった。
「コマリンコマリン! ちょっとコレ飲んでみて!」
開栓した缶コーヒーをコマリに持たせるマユナ。コマリは無言でアマネに視線を送るが、アマネもまた無言でうなずいた。
「………………」
くぴ、と小さく一口だけ缶コーヒーを飲むコマリ。
端末の画面を見るアマネの顔色が変わった。
「これはっ……ごくわずかだが、嫌悪感を示している……!」
そのアマネの言葉に――拳を力強く握るマユナとジュリ。
ジュンは相変わらずニコニコしていた。それがどういう意味なのかよく解っていなかった。
「検証の結果、新事実が判明しました……! コマリンは……ニガいものが苦手……!」
どん、と強く机を両手で叩きながら万感の思いとともに新事実を発表するマユナ。
「やったなマユコ! 諦めない心の勝利だぜ!」
「ノーベルしょー」
「うむ……! この発見は地球人類の未来を切り拓くだろう……!」
その発表になぜか満点のやりきった感を出す検証メンバー一同。
ランセの左目から、光が消えかける。
「……………………………………遠見。苦手なら無理して飲まなくていいからな」
「………………」
ランセはものすごく疲れた顔をしていたが、コマリは無表情のままくぴくぴと缶コーヒーを飲み続けていた。
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