お弁当

          ☆    †    ♪    ∞


              [二〇××年 某月某日]

[午後一二時五四分]

              [公立春日峰かすがみね高校 中庭]


 昼休み。その日は天気が良く、マユナの提案によって中庭のベンチに座って昼食を摂ることとなった。


「………………」


 文字通り黙々と昼食の弁当を口にしていくコマリ。

 ロールオムライスをメインに、アスパラガスのベーコン巻きとレタス、ポテトサラダ、オレンジが添えられたコンパクトながらも綺麗にまとまった構成。

 アマネと同じ、お揃いの弁当だった。


「……遠見。口にちょっと付いてるぞ」


 コマリの口元にオムライスのケチャップがすこしだけ付いているのに気付いたランセは、ジャージの袖でくしくしと軽くそれをぬぐう。


「………………」


 それを見たアマネはなにを思ったのか、オムライスを口に運ぶように見せかけてほんのわずかに口からずらし、さりげなくケチャップを口元に付けた。


「自分でけ」


 しかしランセにはそれがわざとであることが完全にバレていた。

 しゅん……とケチャップを口に付けたまましょんぼりとするアマネ。


「あーっ! お姉ちゃんのエビフライが人類に反旗を! ランセちゃんとってとって!」


 今度はマユナが口元に小さいエビフライを丸々一個付けてランセに助けを求める。


「……むしろそれどうやって付けた」


 ランセにとって、そちらの方が疑問だった。

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