ヒューマン・インテリジェンス
☆ † ♪ ∞
[二〇××年 某月某日]
[午後一時二四分]
[公立春日峰高校 一年一組教室]
「誰が一番インテリっぽく見えるか選手権~~~!」
「「ウェ~~~~~イ!」」
昼休みも半ばを過ぎたあたり。
よくわからない選手権を雑に始めたマユナと、それに同調するギャル二人――
「さあさあ一番手は誰だ!」
「やるー」
マユナの呼びかけに応じて、まずはジュンが手を挙げた。
前もって準備していたのか、パーカーのポケットから伊達メガネを取り出し、それを身につけるジュン。
食休みしていたアマネの髪を黙々とブラッシングしていたコマリの背後に回り、ちょきちょきとコマリのポニーテールにハサミを入れ始める。
――枝毛の処理であった。
常にゆるい雰囲気をまとっているジュンにしてはいつになく真面目だったが、それは枝毛の処理であった。
「――いんてりじぇんす」
ドヤ顔を決めるジュンに、神妙な面持ちでうなずくマユナとジュリ。
「ほほう……なるほど……」
「そー来たかー……っし、じゃー次ウチなー」
二番手はジュリ。
ブレザーのポケットから伊達メガネを取り出し、それを身につけて自分の席に腰を下ろす。
そこでバサリと広げたのは――新聞紙。
競馬新聞『優馬』
一面には安田記念の出馬表が載っていた。
「……航空大手の業績回復……三菱重工……ジャムコ……こりゃあ行くしかねーな……航空機関連株……!」
競馬新聞に載っているはずのない株式ニュース。
それらしく聞こえはするが、冷静に聞けば中身はカケラもない。
「――インテリジェンス」
ドヤ顔を決めるジュリ。マユナは満足そうにうなずき、ジュンにいたっては「インテリー」と感心していた。
「最後はお姉ちゃんか……いいだろう、見ていたまえ」
どこから取り出したのか、自前のゲーム用メガネを身につけたマユナは自分の席に座り、バッグからある物を手に取った。
――ルービックキューブ。
立方体の六つの面がそれぞれ九個の正方形に分割された、世界でも有名な立体パズル。
一面を一色に揃えるだけでも素人には至難とされる難物である。
色がバラバラになっているキューブを、どこも回転させずに様々な方向から真剣に見つめるマユナ。
ルール上では
そして――マユナの両手が
凄まじい指さばきで高速回転するキューブ。
所要時間わずか五秒で、マユナはすたーん! と勢いよくキューブを置いた。
――キューブは一面一行たりともまったく揃ってなかった。
「――Intelligence」
ネイティブ発音でドヤ顔を決めるマユナに、ジュリとジュンはわっ、と歓声を上げた。
「マユコすげー! インテリっぽい!」
「ぽいー」
「……お前らのインテリ観、底が浅すぎないか」
見てる方が心配になるレベルのインテリ観に、どうしてもツッコまずにはいられないランセだった。
ちなみに結局『誰が一番インテリっぽく見えるか選手権』は、マユナが放り出したルービックキューブを八秒ほどで全面全色揃えたアマネが優勝となった。
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