レッスン・社長の想い

月曜日の15時に私はワラライブの事務所にいる。今日の公式配信から私は正式にワラライブ所属となるのだ。マネージャーの武藤千香(むとうちか)さんに話しかけられた。

「美羽さん、待ってましたよ。じゃあ事務所の中を案内しますね。」

「お願いします。」

面接に来た時は間取りまでは、分からなかった。一階にトイレとシャワー室があり、広い部屋はスタジオ兼レッスン場として使っているそうだ。二階は、社長室と会議室と控え室が二部屋らしい。そして、武藤さんから社長室に行くようにと言われた。

「失礼します。」

社長室に入ると、前回あったときとは雰囲気が違う私服姿の花咲瑠衣(はなさきるい)社長がいた。

「美羽さんね。お久しぶり。」

「お久しぶりです。」

「どう?緊張してる?」

「はい、そうですね。」

「そうよね。無理もないわ。ごめんね。今からレッスンしてもいいかな?」

「レッスンですか?」

「ええ。ワラライブはアイドル芸人を育てる事務所よ。芸人要素よりもアイドル要素を重視してるの。勿論あなたにも歌って踊ってもらうわ。じゃあ、行きましょうか?」

こうして急遽レッスンをすることになったのだが、私は驚いた。

「あのー、レッスンはいいんですけど、誰に教わればいいんですか?」

ここには、私と社長しかいない。どうゆうことなのだろうか?

「私が教えるわ。」

「!?社長がですか?こうゆうのって、専門の人が来るんじゃないんですか?」

「普通はそうよ。歌とダンスの資格を持ってれば社長がやってもいいよね。じゃあ、始めましょうか?」

一時間半くらいだろうか?レッスンは続いた。いざ始まると本格的な指導に驚いた。そしてワラライブ全体曲の『Smile World』の振りを何とか覚えることが出来たのだ。歌は何とかなっているらしい。これからきっちり鍛えられるらしいけど。

「るなのソロ曲は知ってるよね。」

「一等星ですね。バラードの」

「ええ。カラオケに行ったら必ず歌ってます。」

「今、聴かせてもらえる?」

歌い終わると社長が深刻そうな顔をした。

「あのー駄目でしたか?」

「ごめんなさい。歌は問題ないけど、生で聞いて思ったことがあるの。あなたの歌声はるなと似てるのね。応募PVも一等星だったわね。」

「私の歌声がるなさんと似てるんですか?」

「ええ。特にバラードはるなの妹かなって思うくらいに。るなもそうなんだけどあなたのバラードには、聴いた人に安心感を与えてくれるような歌声なの。」

「そうなんですね。ありがとうございます。」

「だから、あなたにはぶつかる壁があるわ。アンチよ。」

「アンチですか?」

「ええ。リスナーの中には、るなを失った悲しみを乗り越えられてないファンも沢山いるの?あなたも訃報を聞いたときは、すぐに受け止めれた?」

「事実なのか理解が出来ずに、一日中悲しみにくれていました。」

「ほとんどの人がそうだと思うわ。私も受け止めるのに時間がかかった。」

「ですよね…それがアンチと関係があるんですか?」

「ええ。推しを亡くした悲しみ。生きがいを失った事実。それを癒すことがあなたに出来るの?」

「るなさんの変わりになれってことですか!?」

「なれるの?」

「なれないですし、なってはいけないと思ってます。なりたくないです。」

「ええ。私も同じ意見よ。なって欲しくない。ならせてはいけないと思ってるわ。でもね、リスナーの中にはあなたをるなの変わりとして見る人もいると思うの。その人達はあなたに何を求めると思う?」

「るなさんの変わりですか?」

「ええ、多分。でも…私はあなたにそうなって欲しくないの。だから、あなたには、小鳥遊酒由として、るなの呪縛に囚われているリスナーを救って欲しいの。それをサポートするのが、私の願いでもあり使命でもあるの。これが社長としての私の想いよ。」

「そうなんですね…私頑張ります。」

こうしてレッスンは終了した。部屋を出ると二人の女性に出会った。















































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