オーディションへの結果

会場に30分も早く着いてしまった。着くと若いスーツ姿の女性に案内された。

「初めまして。社長の秘書をやっている武藤と申します。本日はお越しいただきありがとうございます。こちらに座ってもうしばらくお待ちください。」

「ありがとうございます。」

緊張しまくりだった。少しすると他の応募者も来たようだ。最終オーディションが始まった。自己紹介から始まり、活動内容など色々と聞かれていった。

「最後の質問です。あなたがワラライブに所属出来たら、ワラライブをどうしていきたいですか?」

今までは秘書が質問をしてきたのに、社長が質問してきたのだ。他の応募者が次々と答えていく中、私の順番になった。

「はい。私が御社に入社出来たら、ワラライブの魅力をもっと色んな人に伝えていきたいです。見ている人を笑顔をにして、そして癒しを届けるそんな活動を先輩達としていきたいです。そして、亡くなってしまった北牧るなさんの分も、引退された先輩方の分まで頑張りたいと思います。以上です。」

「本日はお集まりいただきありがとうございました。結果は後日お知らせ致します。」

こうして、最終オーディションは終わった。

私と武藤は、すぐに会議をした。今回、採用するのは一人と決めていた。既に決まりきっていたのだが…

「社長、本当にこの子でいいのですか?もう少し人気のある子を入れたほうがいいのではないですか?」

私が悩んでいるのは人気なのだ。小鳥遊酒酒由に決めたいのだが、彼女よりも知名度や人気がある応募者はいる。だが、

「人気も大事だと思うのよ。でもね、この子には他の応募者よりも私たちワラライブのことを知っているのよ。」

「でも、調べれば出てくることですし。」

「そうね。でもね、この子からは日葵への愛を感じたの。」

「日葵さんへの愛…」

日葵(ひまり)というのは北牧るなの本名だ。社長の友人でもあったのだ。そして私が担当していたライバーでもあった。

「『推しがみるはずだった未来を見たい』『でも変わりにはなれない』彼女の応募PVにあった言葉よ。」

「日葵さんが見るはずだった未来、変わりにはなれない…ですか。」

「ええ、そうよ。あの子ならワラライブを今よりも成長させてくれる。ワラライブに新しい風を吹かせてくれる。そう思わない?」

「そうですね。人気よりも大事なのは熱意ということですね。」

「それに、彼女には日葵を応援してくれていたリスナーの気持ちも分かると思うの。」

「気持ちですか。」

「ええ、推しを唐突に亡くした悲しみが。そして、彼らがアンチとして攻撃して来てもそれを受け止められる力があると思ってるの。日葵のリスナーの中には彼女の引退を受け入れることが出来ていない者もいる。その中には悲しみから新しく入った子にアンチ活動をするかもしれない。そうなって欲しくはないけど、可能性はあるわ。」

「社長はそこまで考えていたんですね、」

「そうよ。あなたには酒由さんのマネージャーになってもらうわ。いいよね?」

「はい、大丈夫です。」

オーディションから二日後のお昼過ぎに一本の電話がかかってきた。どこかで見たことのある電話番号だ。

「もしもし、木場です。」

「ワラライブ社長の花咲です。酒由さんですね。最終オーディションの結果をお知らせします。合格です。おめでとうございます。」

「ありがとうございます。」

「来週の月曜日の15時にワラライブの事務所までお越しください。」

「15時ですね。分かりました。失礼します。」

こうして、私はワラライブに所属することになったのだ。嬉しかった。そして、すぐに社長の電話番号を登録した。

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