オーディションへの想い
私はツイ〇ターで、いつもより早い時間に配信することを伝えた。サムネイルにはシンプルに『まじめな報告』という文字だけが写っているのだ。時間になった。
「こんばんは。アル中VTuverの小鳥遊酒由です。いつもと雰囲気が違うよね。今回は一滴もお酒を飲みません。皆に報告があるの。聞いて欲しくて。」
『誰だ!この女』
『俺らのみゆちゃんはどこだ!』
『お酒もう飲んでるんだが…』
など動揺しているリスナーもいれば…
『あのことかな』
『悲しい訃報についてかな』
など察しているリスナーもいる。
「相談の前にね、私の推しについて語るよ。私の推しは北牧るなって言うの。ワラライブ所属だったの。ワラライブっていう事務所は、アイドル芸人として活動するライバーが所属する事務所で、『皆を笑顔にして、皆を癒したい。』という思いで、るなちゃんと友人が作った事務所なの。」
『始めて知ったなぁ』
『昼にツイ〇ターで流れてたなぁ』
『でもその子って』
「でもね、昨日の夜中に交通事故で亡くなったんだ。それを知ったときは感情がぐちゃぐちゃだった。それでね、私は推しがみるはずだった未来を見たいと思ったの。オーディションに応募しようと思うの。このことについて配信しようと決めたときは、まだ悩んでたけどね。私がるなちゃんの変わりになるつもりもないし、なってはいけないと思ってるの。でもね、このままワラライブは終わらせたくないの。!」
『決意がすごいなぁ』
『そっか。』
「もし合格したら、今までの小鳥遊酒由じゃなくなるかもしれない。そうなっても私のことを応援してくれる?私をまだ推してくれますか?」
『もちろん』
『とうぜん』
『みゆちゃんと言うよりかは中の人が出てるなぁ』
「皆、ありがとう。これからもどうかよろしくね。明日からは通常通り配信するからね。皆で騒ごうね。おつみゆー。」
こうして配信を終わらして私はワラライブの事務所に応募PVを作ることにした。3,5期生オーディションの応募サイトに、どんな配信をしてるかを伝えるPVだ。
るなちゃんがいなくなって始めての月曜日だ。いつもは20時からワラライブの公式配信が公式チャンネルで行われいるのだが、今週は行わないそうだ。るなちゃんの初配信のアーカイブでも見ることにした。翌日、一本の電話がかかってきた。見慣れない電話番号だった。
「もしもし、ワラライブ社長の花咲瑠衣(はなさきるい)です。3,5期生オーディションのご応募ありがとうございます。対面での最終オーディションへ来て頂きたくお電話しております。応募サイトにも書いてありましたが、明日の14時にワラライブの事務所までお越しください。住所も応募サイトに乗っておりますので。」
「はい。ありがとうございます。明日の14時ですね。必ず伺います。」
こうして私は最終オーディションへと向かうことになったのだ。前回は書類で落とされていた私にとって、社長と話したのは初めてだった。
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