アル中VTuberが事務所に入る。

せいや

推しの唐突な引退によって日常が壊れる。

今日も最高に可愛くて面白い配信だった。続きはアーカイブで見よう。そう思いながら配信を閉じて自分の配信の準備をする。私の名前は木場美羽(きばみう)だ。自分も小鳥遊酒由(たかなしみゆとして)VTuverをやっているのだ。推しの名前は北牧るな(きたまちるな)だ。ワラライブの唯一の一期生だ。ワラライブはそこまで大きな事務所ではない。彼女と社長が「アイドル芸人として活動するVTuver事務所を作りたい」っと言って作ったのが、ワラライブだ。配信準備も整ったし、赤ワインの準備も整った。配信をスタートさせていつものコールを入れる。

「お前らー今日も一日おつかれー!!KP!!」

『KP!』

「どもどもー。アル中VTuverの小鳥遊酒由です。今日はパワ〇ロの栄〇ナインをやっていくぞー」

と言いながらワインをグラスに入れて、一気に飲み干す。

『まだシラフなAだ』

『今日はいつぶっ倒れるのか楽しみだ』

私の配信は基本的にゲーム配信で7時間を超えるのだが、ほとんどは寝ているので、寝てからは、リスナー同士の会話になり、私が起きたらゲームの区切りをつけて配信を終わらせるのだ。アラームがなった。そして私は起きる。

「ふぁぁー、お前らおはよう。ゲームの状態はどんな感じだ?部員の練習が終わったのか、なら切りがいいね。じゃあ、終わろうかな。」

いつものコールを入れる。

「徹夜した奴は寝ろよ。出社のために起きた人はおはよう。仕事頑張れよ。夜勤から帰って来た人はお疲れ様。お前らの会話は見させて貰うからな。よっしゃーー!朝だー!おつみゆー」

『おつみゆ』

そして朝ご飯を作り毎朝のジョギングに行く。ほぼ毎日1,5Lのお酒を飲みながらも健康な体を維持するためにやっている。帰って来たら朝ご飯を食べてレモンサワーを飲みながら、推しのアーカイブを見てから、自分が寝てからの配信のコメント(リスナーたちの会話)を読んだら感想をツイ〇ターに投稿する。そして毎日上がる切り抜きを見る。ゲームなどをして昼ご飯を食べてストゼロを飲み仮眠を取り、起きたらサムネイルを作ったりリプ返したりゲームしたりする。そんな日常が今日、崩れたのだ。

「嘘だろ。なんで…るなちゃんが…どうして…」

仮眠から目覚めた私はワラライブの公式からの発表に目を疑った。その内容は、Aの中の人が事故にあい、亡くなったそうだ。推しの引退。VTuverにはよくある話だ。だが、今回は唐突すぎるのだ。私はこのやり場のない怒りというのだろうか。悲しみというのだろうか。感情の整理がつかなかった。Aの配信がもう見れないという事実だけは飲み込むことが出来たのだ。感情の整理がつかない。それと同時に驚愕のオーディションが開催されるらしい。ワラライブ3,5期生募集。応募条件が驚愕だった。その条件とは、個人でVTuverをやっていてチャンネル登録者が1万人以上の者と書いてあるのだ。私は応募しようかどうか迷っていた。私は三か月前に行われたワラライブの三期生オーディションに落ちている。そんな私が受かるのだろうか。このオーディションは事務所の存続をかけた北牧るなの変わりを探すオーディションではないかと考えたのだ。受けるべきかどうか考えた結果、リスナーに配信で聞くことにしたのだ。この瞬間から私の日常が壊れた。

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