第5話 変化
泣き、笑い、それをしていない間はフリーズ。
そして夜になると全身の筋肉が弛緩したようにぐでんぐでんのまま部屋の物をなぎ倒す。
それがルーチンとして染みついてからも、夜に薬をのんでから抱く観念が変わってきたようです。
「私は室町時代の武士であり、猿である。」
「風呂とは、宇宙だった。」
のような訳の分からない文言が机の上に並べられることが増えてきたのです。
私室にもどってから書きなぐったもので、「武士かつ猿云々」の方は私がぐしゃぐしゃの紙から切り取って今も保管しているはずです。
夜の私。薬を飲んでから眠りに就くまでの私がいったい何を考えていたのか。
少し理解できるようになったのは、もう少し先のことでした。
そして、もう一つの変化。
今まで服薬してからすぐに目の前が歪み、平行感覚を失いながら自室へ上がる。部屋の扉を開けたらあちこちぶつかり、なぎ倒しながらベッドへ向かう。
これをほぼ疑問を抱かず繰り返していましたが、よく考えてみたら「入眠剤」は今まで飲んできた普通の睡眠薬とは違う。デパス、ロゼレム、レンドルミンその他もろもろ全部効くまでに時間を要したはず。(私は幼い頃から飲んでいたため効かない?)
その「効くまでに、眠くなるまでに時間がかかる」という私の経験で、速く効くゾルピデムも同じ括りに入れてしまっていたのです。
服薬後にお風呂に入り、着替えて、明日の準備。一階風呂場、リビング、階段を上がり二階の自室へ。
ケガをするに決まっている!
気がついたら私の身体は痣だらけでした。風呂場で、階段で、部屋の中でついたであろう痛々しい赤、青、黄。それを認めたとき、ようやくルーチンを崩すことに決めたのでした。
風呂、明日の準備、まず全部済ませてしまってからベッドの上で薬を飲む。それだけ。
わざわざ這いつくばって階段を上る必要もない。
全部自分の部屋のなかでことが済む。
全部解決。逆になんでいつもリビングで薬を飲んでから二階に上がる必要があったんだろう。やれやれ、これで身体を痛めつけなくてもよく眠れる。
・・・そう思ったのですが、「自室で薬を飲む」、この選択が私にめくるめく幻覚の数々をみせる原因になってしまいます。
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