第4話 オーラへの罰
爆ぜる音が聞こえる。
「ふぁ…」
あくびすると、上からパラパラと葉が落ちてくる。
「ああ…おはよう」
______また100年近く寝ていたか。
痛みがすっかり引いている。
☆
それにしても…
俺はブラブラ歩きつつ記憶をたどる。
(ラジカルを守るためとはいえ、完全変態はやりすぎたな…変に伝承など残ってなければいいが…)
俺はエオに呪いをかけられた。
5,000年ほど前か。いや、5,100年だ。
本来のドラゴンの姿に一度戻ると
代償として激痛が100年つづく。
耐えるか、寝るかしか痛みをしのぐ方法はない。
あの島から堕とされて、以来ずっと探している。
…帰りたい。
地面全体を青い花が覆いつくし、
白い天文台の側にいつか仲間と建てた…
ゲレナの墓がある、あの島に。
もう、許してくれないか。
俺はまた痛みに耐えながら空を飛ぶのか___
「ルナ…」
ふと、あいつの名前が浮かんだ。
あのガキももうとっくに死んでる。
100年経っているんだ。
俺らと奴らの時間の流れ方は違う。
「いつも残されるのは俺らだけだな」
サワサワと枝を揺らしているシイカに話しかけた。
「ハハッ…つまんねぇ嘘つくなよ。
…ルナは死んで、新しいラジカルが生まれてる」
俺は羽を広げた。
「前回も言ったろ?
俺が蒼天島を見つけないと…ラジカルは生まれ続けるんだ。
次こそは見つけるから、もうしばらく辛抱してくれ」
シイカが俺の頬にツルを伸ばす。
(( …もう、やめてください))
シイカが俺にささやいた。
熱いのがこみ上げる。
「やめねぇよ…メラナもロモスもまだ頑張ってるんだ」
羽を仰ぐ。
ふわりと俺の身体が宙に浮く。
「…じゃあな。またラジカルを頼む」
ガシャガシャ、ガシャーン……
陶器らしきものが割れる音が響いた。
まずい。誰かに見られたか…?
俺は音が鳴った先を見ると
紫髪の少女が立っていた。
「…オーラ?」
「……………は、え?」
ガキがいる。
「おぉ…起きた、、
起きた起きた起きたっやっと起きた!!」
ルナが俺に向かってジャンプする。
っ!!
なんでっ…! まだ夢でも見てるのか…?
お前は……死んでるはずだろっ!!!
「オーラ!!!」
俺はルナを空中で受け止めて、地上にまた堕ちた
☆
「あああああぁ〜!!」
死んだはずのガキが俺の胸で泣いている。
…どういう、ことだ…?
「お……おおお"お"い!! シイカぁ!
ほんとはあれから何年…!」
「6年…」
ルナが言った。
「…ぇ…?」
あのルナが俺の顔を見て言う。
「…っ6年! あなたずっと目を覚さなかった…!」
俺はフラフラ立ち上がる。
何が起きてる?なぜ俺はたった6年で回復した?
「オ…」
「うるせぇぇええええ!!」
「はっ…はっ……お前ぇ…なんで生きてんの?
100年経ってんだぞ!?とっくに____ 」
「違うっっ!…オーラ……6年よ」
…なんだよ、そんな目で俺を見るなよ…
俺は勢いよくルナを捕まえた。
「お前何かしたなっ!?俺に何しやがった!?
…ラジカルっ!! 何しやがったっ!!!」
ルナは途方に暮れた顔でポツリポツリ答える。
答えるたびに大粒の涙がこぼれていく。
「何もしてない…なにも…できなかった…
ご神木様がぁ…通してくれなくて…なにもっ!
…ただ祈ることしかっ」
いのる…だと?
「…は…………それだけ?」
ラジカルの祈りだけで、罰が軽減したのか…?
「はぁ…!?
よりによってあなたが!そんなこと言わないでっ!!」
ワナワナと顔を真っ赤にさせたルナは
俺に往復ビンタをくらわせた。
☆
「ごめんオーラ…痛い?」
「痛かねぇよ、こんなもん」
彼はふてくされながらそう答えたが
両頬が赤く腫れ上がっている。
そりゃそうよ、籠手で思い切り叩いてしまったもの。
私は薬草で作った5枚目の湿布を彼の頬に慎重に貼るが、すぐに剥がされ放り投げられる。
「もう!貼ったそばから剥がさないでよっ!」
「知るかっ!いらねぇって言ってんだろ!!」
6年ぶりなのにこの調子。
それにしたって彼は酷すぎる。
ご神木様の中に閉じこもって入れてさえくれなかったのにあの言い草。
ムカついたので、すり潰した塗り薬を丸ごと顔を塗りたくってやった。
「いっ…おい!」
「黙れ!!!!」
大声出してやった。神様だけどもう知るかっ!
「何回も呼んだのよ!毎日会いにきた!
なのにオーラはちっとも出てきてくれないっ!
何で黙って閉じこもったりなんかしてたのっ!!」
オーラは青い目をパチクリさせている。
「何度も祈ったわ!神様の無事を神様に祈る意味ないことばっかりしてた!それしかできなかったからよ!分かるっっ!??
ねぇ…私のこと治したからでしょう?
…6年も眠ってたのは私のせいなんでしょう?」
そうよ、そうよ私は…
「ごめんなさい…謝りたかった。
ずっと…ずっと謝りたかったの…」
死ぬはずだった私にまた命を与えてくれたから
あなたは力尽きたんでしょう…?
オーラは私の頭を撫でて抱き寄せた。
オーラの匂いがする。
「…悪かった。お前のせいじゃない。
俺な…寝たらなかなか起きれねぇんだよ。
だからまたお前に会えると思わなかった」
「…意味わかんない」
彼はすべては教えてくれないけれど、
嘘もつかない。
でも…こんな言い訳だけじゃまだ割に合わないわ
「幻黄祭」
「…ん?」
「幻黄祭!お祭り! 一緒に行こう?」
お願い。
これぐらいのわがまま、聞けないはずないでしょう…?
つづく
巫女ルナはソラ神様に恋をする 宮端 海名 @miyahata_umina
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