第3話 ラジカルの巫女
目を覚ますと青空が広がってた。
キラキラ輝いて、まるでオーラの瞳みたい。
好きなんだ、あの目に見つめられるのが。
嫌なことも全部忘れられる。
でもそれは空じゃなかった。
オーラの手から輝いている青色の鱗だった。
「その手、どうしたの?」
「悪りぃな」
オーラはそう言い残して、巣穴から外に出た。
いつの間に巣穴の中に入ったんだろう…?
(たしか…)
私はハッとして外を見た。
「…………え…」
オーラがどこにもいない。
巣穴の外にいたのは、お父様たちと
蒼いドラゴンだった_____
「我が名はオラスラ。
創造神エオより遣われし審判がひとり」
蒼いドラゴンが地響きような声で言った。
ゴロゴロと深くため息をつき、
ご神木様を指しながら付け加えた。
「後ろの苗木より格上だ。 …これで十分か?」
お父様たちはその場で尻もちをつく。
「…ばけ、もの?!」
シトシトと雨が降り出す。
かと思ったら雨足は強まり、
遠くで雷鳴が聞こえ、瞬く間に嵐がやってきた。
(何が起きてるの…?)
「おゆっお許しを!オーラ様!
どうか、どうか!」
お父様が青い顔をして、地面に頭を擦り付ける。
風に煽られ、ご神木様がキシキシ悲鳴を上げる。
(ご神木様………え?)
「…オーラなの?」
近くで雷が光った。
ドラゴンの鱗が煌めいた。あの目と同じように。
「やめてっ!!!」
私は夢中で飛び出した。
無我夢中でオーラのもとに走ったけど、たどり着く前に私は風に飛ばされる。
「ルナ!!」
お母様の叫び声が聞こえた。
みるみるご神木様が小さくなる。
(っお母様!助けてっ!)
ギュっと目をつぶる。
これで 最期なの……?
「…オイ、クソガキ」
オーラの声が聞こえた。
気がつくと私はドラゴン姿のオーラに抱き抱えられていた。
「飛べたんだ…」
「当たり前だろ」
「オーラ…おこってる?」
「怒ってねぇよ。てめぇの親父ビビらせただけだ」
国全体に雨が降り注ぐ音がする。
でもオーラの側はとても静か。
まるで…私たちだけ別のトコロにいるみたい。
「雨はいつも、あなたが降らせてるの?」
「…いや、今日だけ特別だ」
「すごいね、オーラはやっぱり私の神様…」
私はオーラのほっぺにキスをする。
「でももう
「………」
オーラは鱗を一枚剥がしてフッと息を吹きかけると、たちまち雨雲が消えていく。
☆
私たちが地上に戻る頃には、オーラはいつもの姿に戻っていた。
「ルナ!」
お母様が駆け寄ってくる。
オーラは私は地面に下ろしてポンと背中を押す。
「…行け」
「ルナぁ!」
お母様が私を抱きしめる。
涙で顔がぐしゃぐしゃだった。
「…ママ…」
気づけば私も泣いていた。
わからないけど力いっぱいお母様にしがみく。
「立ち去れ」
ビュッと風が吹く。
お父様たちは大声を上げながら逃げて行く。
お母様はオーラに涙声で話しかける。
「オーラ様!ありがとうございます…!ルナを助けていただいて、ありがとうございます!」
お母様は何度も何度も頭を下げる。
だけどオーラは何も言わずに、
巣穴の中に消えいった__
☆
翌日。
「ねぇねぇねぇ。あしたは雨ふる?」
「こらルナ!」
おかしいな。何で一人増えるんだ?
頭のおかしいクソガキに加え、
今朝は母親も来ている。
「何しに来た?」
「恐れながら昨日のお礼をさせてください」
母親はおずおずとカゴに入った食べ物を差し出してきた。
「…なるほど、俺はてめぇらごときに恵まれねぇと生きていけねぇと思っているのか」
「!?っいえ!そのようなことは、決して…!」
母親は青ざめた様子でその場で平伏した。
するとまあ…当然ガキが怒り出す。
「やめて!お母様をいじめないで!」
「チッ……女、ツラ上げろ」
母親はブルブル震えながら俺を見る。
「ダメだって!」
ガキは俺に突進してくる。
「いじめてねぇ!黙って見てろ!」
母親がクッと息を呑むのを横目に見つつ、
暴れるガキを横に座らせた。
「いいか」
俺は可能な限り優しく母親に喋りかけた。
「ラジカルの巫女は丁重に扱え。
村の奴ら全員に伝えろ。
みつぎ物もいらねぇ。不愉快だ」
「……はい」
母親は目をパチクリさせていたが返事をした。
今度はガキだ。
「んで、雨は当分ふらねぇよ。わかったらとっとと帰れ」
「ほんとっ!?」
ガキは目を輝かせて母親の元に走って行く。
…まったく付き合いきれない。
俺は巣穴に引っ込んだ。
「その次は?その次も晴れる?」
「およし…今日はもうお休みされるのよ」
「えー…」
母親とガキは騒いでいたが
しばらくしてようやく帰る気になったようだ。
「幻黄祭の日も晴れるといいね」
「ふふ…そうね」
早く…帰ってくれ…
☆
やがて声は完全に聞こえなくなった。
「ハァ…!ハァ…!うぐっ」
俺は巣穴から這い出る。
全身に激痛が走る。
あの姿になってからの反動がまだ続いている。
頭の上でサワサワとご神木が揺れる。
「ハァハァ…シイカ、隠せ…」
シイカは俺の周りを葉で覆い隠す。
「くっ…!」
仰向けに寝転んだ。
(養生のために来たのに…ザマァねぇ……)
「…少し寝る。ガキが来ても通すな」
シイカは葉を揺らし返事をする。
つづく
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