第4話 愛人

 災害は忘れたころにやって来る。それはまるで、地雷のようだった。不謹慎ではあるけど、野原を何の気なしに歩いていて、いきなり足元からドッカンと来るような衝撃だった。


 Bさんはその日も夜遅く帰って来て、シャワーを浴びた後に台所に向かった。

 いつも風呂上りにお茶を飲むのだけど、その時はAさんに言いたいことがあったんだ。Bさんは冷蔵庫を開けながら言った。


「離婚してくれない?」

 それは、あまりに突然だった。

「え?」

 Aさんは聞き返した。

「養育費出すから」

「困ります!2人も子どもがいるのに・・・」

「今つき合ってる彼女に子どもができたから、離婚してそっちと暮らしたい」


 Bさんは、それまで出会えなかった運命の人に最近出会ってしまったのだ。


「相手の人はいくつ?」

「28」

 Aさんより10歳以上若かった。

「そんな・・・今、何か月ですか?」

「まだ3ヶ月くらいだけど・・・」


 Aさんは、すぐに、まだ堕せると思った。


「別れてください。お願いします」

「俺、本気だから・・・ごめん」

「お願い」

 Aさんは、半狂乱になってBさんに取りすがった。

「やめろよ・・・俺、あんた嫌いだし」

 Aさんは何も言えなかった。自分は何もしてないのに・・・何でそんなに嫌われるんだろう。頑張ってるのに感謝もされないんだろう。愛してるのに・・・。自分と結婚してくれたこと、マンションを買ってくれたこと、子供を可愛がってくれていること、みんな感謝している。


 今の生活を、愛人に取られたくなかった。家族4人の平穏な暮らしも失いたくなかった。


 Aさんはネットで検索した・・・。その両方の望みを満たす術はないかと。


 

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