第104話 Decisive Endanger Ⅰ
少女が空に浮かぶ「目」に向かって駆けていた頃、世界各国の元首達は突如現れた「目」に対してそれぞれ攻撃を仕掛けていた。
先ず、最初に放たれたのは超長距離弾道ミサイルだった。
流石にLAMなどの陸戦兵器では有効射程を遥かに超えている事から、限られた国が保有していた超長距離弾道ミサイルが先制する事になった。だが、本来であればそのミサイルですら使いたくはなかっただろう。
それは非常に高価なモノだからだ。
一方で、もしもそれが効けば
費用対効果ならぬ費用対名声という天秤が頭の中にあり、打算が働いた結果なのかもしれない。
要するに国家元首とは、実に打算的な
だがそんな幻想は儚くも、「目」に届く前に爆散したコトで潰える事になる。
もしかしたら国家元首生命ですら潰えるかもしれないが、それに関しては、さて置くとする。
「目」は地球の成層圏の更に上にある中間圏と熱圏の間に存在していた。だが成層圏と中間圏との間には見えない「壁」が張られており、その「壁」に当たった結果、実弾兵器は爆散したのだ。
拠って、「目」には何1つとして届いていなかった。
いかに
それらの国家元首の進退問題はさておき、実弾兵器では太刀打ち出来ないコトを知った次の行動は、ハンター達への
その結果、世界各国の何千、何万というハンター達は空にある「目」に対して次々に向かっていく事になる。
だがその「目」には実弾兵器同様に、誰一人として届く事が出来なかった。
これもまた当然と言えば当然のコトなのだが、酸素が無ければ如何なるハンターであろうとも生きてなどいられないし、寒ければそれだけで生命活動を停止せざるを得なくなるのだから……分かりきったコトだと言い換えられる。
ハンター達はブーツのチューンナップと、デバイスに対応するASPをインストールしていれば、成層圏まではなんとか到達出来る。
だが、その先の中間圏はなんとかギリギリ難しいと言うか、やっぱり難しいどころか不可能としか言えない。
惑星に住む生物である以上、酸素は必要不可欠である。中間圏まではギリギリ酸素はあるだろうが非常に薄く、そして気温もマイナス100℃と非常に低い。
要するに寒冷地戦闘用の専用装備を更に改良でもしない限り、装備が凍り付いて戦闘どころではないだろう。
だがそんな装備は存在しない。
まぁそれはその通りで、魔獣も多様性に富んでいるとは言え、生物である事に変わりはない。
拠って大気圏外や成層圏ギリギリの場所に好んで棲息している魔獣は、
拠って、そこら辺の
だが、絶対に棲息出来ないかと問われれば答えはNOなのだが、それは余談である。
拠って結論から言うと、各国が
一方で少女は成層圏まで自力で到達すると、そこから先は「
その姿は公安のトレーニングルームでの姿とは違う。言うなれば
即ち禍々しい闇と神々しい光を同時に身体に
ちなみに、周りには誰もいないのでその姿でも恥ずかしさは微塵もないし、気が張っているので知り合いがいたとしても恥ずかしさすら感じないだろうと言うのもまた、余談である。
少女はウィルから聞かなかった為に知る由もないのだが、少女が纏っている力は「魔」と「神」の力そのものである。拠って、少女の身体はマテリアル体からアストラル体へと切り替えられていた。
故に「暑さ」「寒さ」という概念は既に、少女に対してなんら影響を与えていなかった。そればかりか、「無酸素」であっても少女には影響を為し得なかったと言える。
然しながら結果オーライと言えばその通りなのだが、一般的な知識があれば尻込みしそうな状況でさえ、
然しながらこうして少女は、地球に纏わり付いている「目」の全容を知る事になった。
「何なのコイツ?遠目には目に見えたけど……コレって一体何?」
「空に浮かんでる雲みたいなモノなのかしら?でもって、アレが「ソレ」みたいね?」
少女は言うまでもなく
地球を見下ろしていた「目」は、「ソレ」から張り巡らされた緻密な粒子に拠る「
更には触れたところで感触はなく何一つ実体などなかった。
そしてその「膜」の上に「膜」と繋がる「ソレ」の姿があった。要するに「ソレ」から全ての「膜」が形成されていたと言える。
「ソレ」を起点として創り上げられている「膜」が、地球という惑星そのものを覆い尽くしていたのである。
「ソレ」は自身の前に出て来た少女を見ると、ニヤリと
「ソレ」の額には目が6つある。上顎から下の部分には髭のような、触手のようなモノが無数に生えており
その為、口は見る事が出来ない。
見た目は全然
だが、サイズは少女より一回り小さいくらいで、
背中には身体のサイズに似合わない
尻尾も生えている様子だが、少女の位置からだと細かい形状なんかは分からなかった。
「アナタ、名前はあるの?」
「……」
「そう。夢の中に出て来たアンタは
少女は身体の左右にそれぞれに分かれている「魔」と「神」の力を、
装備の色は魔獣の素材で造られた場合、その魔獣の色が色濃く残る。それは素材としての色なので魔獣の体色そのままでは無いのだが、それでも黒や白といった単色よりは味わいがある。
炎龍ディオルギアの素材は燃えるような
だがその愛剣は「魔」と「神」の力を纏った事で塗り替えられていくのだった。
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