第85話 Brilliance Shiner Ⅱ
「
「
ざざざざざざざざざざざしゅぱぱぱぱぱッ
火属性に水属性は親和するが、氷属性は火属性に親和しない。拠ってスカディの精霊石を宿した
風龍は先に身体を拘束して来た雷撃に拠って
異なる3種類に因って
然しながら少女としては、風龍にトドメを刺すことは疎か、風龍の生死については
少女はキリクの仇討ちと息巻いていながらも、既に優先目標はそこにはない。それはキリクは生きていると信じているからであり、生きているならば
水龍の素材を使って造られたあの剣は、神奈川国の英雄の証でもあるし、同じ物を造る事は二度と出来ないのだから……。
それ故に海に向かって墜ちていった風龍が、そのまま海に沈まれては困るのだ。
少女は背中に
こうして、刀を抜き終わると風龍イルヴェントゲートごと海に叩き付けられる前に、再びブーツで空を駆け上がっていくのだった。
風龍の身体は豪快に海に叩き付けられていったが、元々「風」を操る
少女は
「キサマの力、見させて貰った。そして、その刀がキサマの大切な「モノ」なのか?」
「えぇ、そうよ。アタシの大事な人の刀なの!」
「ならば、今回は
「ありがとうございます、
「何だ?
「それならば、遠慮なく……。アナタは一体何者なの?本当に
「あーっはっはっはっ。良い、良いぞ!ヒト種の娘にしては、
「
「アナタが光龍……。本当にいたんだ?」
「だが、本来であれば「
「覚えておくが良いぞ、ヒト種の娘よ」
「輝龍アールジュナーガ・ウィステリアル……。アナタの事、忘れないわ。それと、ありがとう。風龍イルヴェントゲートからアタシの事を助けてくれて。お礼をいうのか遅くなって申し訳無いんだけど」
「ふんっ。良きに計らえ。では、さらばだ」
しゅんッ
「あれが最上位の
輝龍アールジュナーガ・ウィステリアルは去っていった。その姿は掻き消えるように光の余韻だけを残していた。
輝龍が消えた後で少女は、輝龍の名前を心に
「でも、この刀をちゃんと回収出来てよかった……。——ッ!?」
「そう言えば、ところでアレ……どうやって持って帰ろうかしら?それに持って帰るなら、ちゃんとトドメは刺しておいた方がいいわよね?」
少女はキリクの愛刀を愛おしそうに見詰め、少しばかり緊張の糸が解けたが、その際に眼下に揺蕩う風龍が視界の隅に入っていた。
現状で風龍イルヴェントゲートとの激しい戦闘で少女が背負った、その小さな身体を覆っていたデバフは解けつつある。
しかし勝手に出て来てしまった上に、これは
拠って協力を得る為にマムに連絡するのも、爺に連絡するのも憚られた。どっちみち、このまま神奈川国に自力で運ぶか捨てて行くしか、選択肢は無かったと言えるだろう。
少しばかり悩んだ結果、
デバイスには既に光点はない事から、まだ息はあるかもしれないがそのうち息を引き取るだろう。これからの事を考えて少しばかり億劫になっていた少女は、トドメを自分の手で刺さず自然に力尽きてくれるのを選んだのである。
ここから神奈川国に帰るまで、風龍をこのまま引っ張る事を考えれば数日は余裕で掛かる。だからこそ億劫になっていたのは、どうしようもないとしか言えなかった。
少女は疲れているしお腹も空いた。そして極度の緊張から解放された今、非常に眠い。
その為に、そのまま海上を引きずるようにして、先ずは適当な陸地まで持って帰る事にした。食料や水は手持ちがあるから空中でもなんとかなるが、睡眠だけはどうしても陸地が必要だ。
だからこそ、なんとしても寝る場所の確保がしたかった。睡眠不足はお肌の大敵だから仕方がない。
少女の目視では、ここから見える水平線の先に陸地らしきモノは一切見えない。デバイスの縮尺率を最大に変えて、やっとデバイスの端っこに映る程度だった。
陸地に着いたら「先ずは
ちなみに今回の輝龍アールジュナーガ・ウィステリアルとの邂逅が、これから起きる2度目の
既に海の荒れ模様は無くなり、静かで平穏な様相をしている。照り付ける太陽は相変わらずで、冷たい風が吹き抜けていく。
鎖に繋がれた風龍が引っ張られるコトで海面には波紋が起きているが、ここで生まれた波紋は余韻を残しながら次第に薄くなり、細くなり大きなうねりにならずに消えて行くだろう。
然しながら運命とは海面に生まれた波紋のようにジワジワと浸透していくモノで、限りなく無尽蔵に広がっていく枝葉のようなモノと言えるかもしれない。
波間にただようそれは消えてしまうかもしれないが、運命に巻き起こったそれは、いつの間にか大きな「うねり」となって、少女の事を飲み込む時を窺っている歯車にもなり得るのだ。
運命の歯車に挟まれて落命するのか、それとも運命の歯車に逆らって破壊するのか、それはヒト種である少女には分からないコトだろう。
だがもしも仮に
それは人間の運命で切り捨てられる価値観ではなく、ハンターとしての宿命なのだから諦めてはいけないのだ。
さて、ここまでの話しで気付いているだろうか?話しの途中までいたハズの2人がいなくなっている事に。
それではクリスと爺があれからどうなったのか、次はその話しを語る事にしよう。
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