第67話 Mob Ruiner Ⅲ
ざしゅッ
「よしッ、
ピピピピピピピッ
「ぬぉッまたか?!」
ひゅひゅッ
「この程度ッ!」
しゅんッ
最初の1匹はなんなく倒せたが、それを見越した動きで新たに二方向から、今度は同時にクリス目掛けて矢が飛来していた。
しかしクリスはその矢を意図も簡単に払い落とすと、2匹の場所に向けて視線を送って確認していく。
「流石に片方に向かえば敵に背中を射られる。ならッ!」
ぱしゅッ ぱしゅッ ぱしゅッ
ひゅんッ
どごどごどぉん
ぱしゅッ ぱしゅッ ぱしゅッ
クリスは牽制の意味合いを込めて、魔力弾を左方向の
クリスは
「昨夜の訓練の成果を見たかっ!残りは1匹。いざ参る!」
ひゅんッ
クリスが2回目に放った魔力弾は見事に命中していたのだった。因って直撃した
クリスは屋上に残る最後の1匹に向けて、にじり寄って行くが狙われた射手は後ずさる事なく矢を番えては放っていた。やはりこの行動は通常では予想だに出来ない行動なのだが、クリスは違和感と感じなかった様子だった。
「でぇぇぇぇやぁぁぁぁッ」
どぉぉん どぉぉん
「クリスは始めたようね。じゃ、アタシもボチボチやりますかッ。人工精霊、アタシの
しゅんッ
「ありがとッ。じゃあ、セブンティーンはどこか安全な所に隠れて待っててね。何か必要な武器があったら指示するからその時は持って来てもらえるかしら?」
「カシコマリマシタ、マイ・マスター」
「じゃ、どこかいいかしら?」
きょろきょろ
「あっ!あそこなんて良さそうね♪デバイスオン、
「さてと、行きますかッ!ブーツオン」
少女はクリスの開戦の狼煙を聞き届けると、自分も準備に取り掛かるべく空を駆けていったのである。
少女が降り立った場所は、結界内にある大きな木の太い枝の上。少女は敷地内の西側から様子が手に取るように分かる場所を探していた。そして見付けたのがここだったワケだ。
だが、見渡すのであれば上空からが1番見渡せるハズだが、ここに来た理由は他にあった。
少女は手に持ったARに取り付けるアイテムを、デバイスから取り出していく。
そして出来上がったモノは、スコープとサプレッサーを取り付けた
少女が使う
これは第2次世界大戦後に、当時の地球にあった大国に因って開発された小銃の1種である。そしてそれは魔導工学の誕生後に、その恩恵を受けて更に改良され発展していった
少女はその小銃をドクの手で
射程は
そしてこのブラックライフルであれば、通常弾頭であっても威力は高い。
少女はバイザーで大雑把に
そして息を整えると、
本来であればサプレッサーを付けていても、マズルフラッシュが多少は見えてしまい、それで敵に居場所を悟られる事もある。
だが、
サプレッサーから微かに漏れる音だけで、正確な位置を把握するのは非常に困難としか言えない。賢ければ弾道の角度から位置を見抜けるかもしれないが、
群れの配置が賢過ぎるからと言って全ての個体が賢い道理は一切ないからだ。
拠ってゴブリン達に「狙撃ポイントは見抜けないだろう」と少女は考えていた。
要するに慢心していたと言えるだろう。
少女は次々と照準を当てトリガーを引いていく。狙うは
こうして少女がトリガーを引く度に、
少女はこの戦場に30発入りのマガジンを6個、計180発の
その全てを使う気はサラサラないが、
クリスは建物の屋上制圧後に左手に
階段を降りていくと見えてきた文字は「4F」だった。更にこの建物の中にある光点はおよそ30。
クリスのいる階にある光点は9つ。そしてクリスが降りている、この階段は建物の中央部分にある。
それらの光点はその階段を挟んで東西に半分ずつ分かれていた。
「屋上の騒ぎに対して新たに上がって来たのはいなかった……。要するに狙ってるな。出れば即狙い撃ちにされる感じか?流石に挟撃されると此の身とて無傷ではいられない」
ぱしゅッ ぱしゅッ ぱしゅッ ぱしゅッ ぱしゅッ
どどどどどぉぉぉん
クリスは独り言の後で深呼吸を2回行い、精神を集中させていった。
そして壁に身を隠したまま
魔力弾が
だから牽制射撃だが当たらないハズはないと考えていた。
クリスは着弾音が鳴り響く直前に、魔力弾を放った側とは
ひゅッ ひゅひゅひゅッ
「やっぱりかッ!だがこの程度で此の身を仕留められると思うなぁぁぁッ!でぇええやあぁぁッ」
ざんッ
しゅばッ
クリスは自分に向かって襲来して来ている矢を斬り払うと、射手の元に向かって速攻を仕掛けていく。
そして次矢を放つべく
バイザーが示すこの階の
廊下の片側を制圧したクリスは、振り返りながら魔力弾を放ち残りの3匹目掛けて約50m程の廊下を特攻していった。
少女の
この工場跡の西側は一面全てが壁であり、その壁の向こうは
先ずは屋上。次に窓際。物陰に隠れたり見える所にいないのは取り敢えず除外。弾薬を無駄にしない為に、無理には狙わない。無駄弾を減らす事がハンターとして
そうやってその階の見える所に敵影がいなくなれば階を1つ下げていく。
ばしゅんッ
「これで、32匹目っと。殺傷力でホローポイント弾にしたけど、流石に対物ライフルくらい貫通力がないと壁ごと抜くのは難しいなぁ」
「
「ま、アタシとしては、先頭切ってドンパチしてた方が発散にもなるしねッ。今日はクリスの見極めだから……って、ヤバッ。さっきから
少女が持って来たマガジンは既に1つ終わっていた。現在は2つ目のマガジンを装着し、
だが、ここから
それでも尚、少女は場所を変えずにデバイスとスコープを駆使してゴブリン達を1匹でも多く屠っていく事にしたのだった。
空は更に灰色を濃くしている。いつ雨が降ってきても可怪しくはないだろう。あまり時間に猶予が無いかも知れない。
少女は、焦る心を落ち着かせつつも引き金を引き
「お願いだから、雨は降らないで。これ以上、
「濡れるのも濡らされるのも正直イヤなの」
無駄な祈りと知りながらも、天気の回復を切に願う少女がそこにいた。
目の前にあるスコープを覗き込みながら。
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