第65話 Mob Ruiner Ⅰ
少女はどうしようもなく眠かった。
昨夜、クリスの
よって「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」でカウントが増えた場合は、様々な難癖を付けた。その様相は悪役令嬢のようであり、クリスはいびられる可哀想な
そして少女が内々に決めていた目標である、「命中精度9割」が達成出来た時には深夜2:00を過ぎていた。
たかだか数時間でここまでの精度に到達するのは、基本的には不可能だろう。
途中で爺が2人分の夜食を作って持って来てくれたのは、何時頃の事だっただろう……それはよく覚えていない。
2人は時間を確認する事無く、
2人が夜食を食べたのは、条件を達成してからなので2:00はとっくに回っていた事になる。
それから2人はそれぞれ部屋に戻り、少女は部屋に備え付けられているシャワーで汗を流し
そして数時間が経過すれば当然のように朝が来た。予めセットしておいた、けたたましく鳴る目覚ましの音に容赦なく起こされ、「なんでこんな時間に起きなくちゃいけないのッ!」と恨んだ少女だった。
その結果として、どうしようもなく眠かったのである。段取りを見誤った自分のせいなのは言うに難くない。
気を抜けば意識が飛ぶ。眠気に負けそうになりながらも、熱めのシャワーを浴びて眠気を飛ばそうと必死だった。それでも眠たいものは眠たい。
人間である以上、3大欲求には勝てないモノなのだ。
シャワーを浴び終えた少女は、眠い目を
仄かなシャンプーの香りを漂わせながら。
「おはようございます、お嬢様。本日は熱めのブラックコーヒーにしておきました。苦味が強いようでしたら、砂糖とミルクを足してお召し上がり下さい」
「おはよ、爺。コーヒーありがと。さっすが爺は分かってるわね。あと、昨夜は夜食もありがとね。美味しかったわ」
「恐れ入ります」
「あぁ、良い香りね。紅茶もいいけど、眠い時はあっちぃブラックもいいわね。うわっちち。あちかった」
「これはなんの匂いだ?香ばしい香りがするが?」
「あ、おはよ、クリス。起きれたようね?ちゃんと寝れたかしら?ところで香りってこれの事?これはコーヒーだけど、クリス知らないの?」
「これがコーヒーと言うものなのか。遠くからでも実にいい香りだ……。ところでアルレ殿、執事殿はどちらに?」
「おはようございます、クリス様。当方に何かご用事で御座いますか?」
「ひゃうっ。ししし執事殿。お、驚かされるな」
「それは失礼致しました。クリス様の分もコーヒーを淹れて参りましたが、紅茶の方が宜しいでしょうか?」
「い、いや、そのコーヒーを頂きたい」
「それではこちらを、どうぞお召し上がり下さい」
ごくっ
「苦ッ。コーヒーとは香りは良いがこんなにも苦いモノなのか?」
「苦いんだったら、砂糖とミルクを入れて味を調節するのよ」
「ふむ。これだな?」
ちゃぽんッちゃぽんッちゃぽんッ
たら~
「えっ?!クリス?」
「どれどれ?おぉ、凄く甘い!そして旨い!いいな、コーヒー。気に入った!!」
「どんだけバカ舌なのかしら?」
「ところでクリス様、当方に何か用事があったのでは御座いませんか?」
「おぉ!そうだったそうだった!昨夜、部屋に戻って袋の中を見たら見知らぬ服が入ってたのだ。執事殿、何か知るまいか?」
「へぇ、爺もやるわね」
「それはお嬢様が着なくなった服を縫い合わせて、クリス様に似合いそうなデザインで当方が仕立てさせて頂きました。お気に召しませんでしたか?」
「やっぱり執事殿だったのか!いや、しかしだな、このような物を此の身が受け取って良いのだろうか?」
「いいじゃん、受け取っておきなさいよ。それに、結構似合うんじゃない?」
「お洋服は幾らあっても困る物では御座いませんので、ハンター実技試験の合格祝いに縫わせて頂きました。お気に召すようでしたらお嬢様も仰ってますので、お納め下さい」
「に、似合うかな?このような服は着た事がないので何かと恥ずかしいモノだな」
昨日、服を買ってもらったクリスだが、その際に買った服はどちらかと言えばメンズファッションで動きやすさを重視したラフスタイルだった。だが、今クリスが手に持って広げているのはそれとは違う。
例えるならば「
少女からすれば、昨日見た「半裸」とも言える一張羅よりは、段違いに良いのは当たり前だった。更に言えば「半裸」は良くて、スカートは恥ずかしいと言ってるその気持ちは理解出来なかった。
「さてとクリス、準備はいいかしら?」
「あぁ、此の身は問題無い。準備は万端。いつでも出れるぞ」
「それじゃあ
「行ってらっしゃいませ。お嬢様」 / 「行ってらっしゃいませ、マスター」 / 「あるじさま、お仕事がんばって」
「オハヨウゴザイマス、マイ・マスター。目的地ハ、オナダー市ニ設定サレテイマス。自動デ走行致シマスカ?」
「おはよッ、セブンティーン。うん、自動で宜しく」
「カシコマリマシタ。概ネ、40分程デ到着致シマス」
2人は3人に見送られるとセブンティーンに乗り込んでいった。2人が乗り込むと抑揚の無い声が、いつも通りに紡がれていく。
少女は目的地に到着するまでの時間で、クリスと
本来であれば昨日の内にやっておきたかったのだが、あの一張羅のせいで計算が狂ったのだ。くれぐれも訓練に掛かる時間を見誤ったワケではないと補足しておく。
今回の
文字通りの地域内に棲み付いた魔獣の「
拠って1匹たりとも逃がしてはならず、殲滅する事以外に
そして、その際に使われるのが統合演算装置・ミュステリオンからダウンロードするメインパッケージの、
ただし結界を展開していられる時間は60分が上限であり、攻撃などを受ければ耐久が減り耐久が失くなれば結界は破壊される。
制限時間の60分を超えた場合は消滅するが、一定のクールタイムを過ぎれば再度結界を構築出来る。然しながら破壊された場合には、再度ミュステリオンからのダウンロードを要求される。
殲滅戦の
拠って難易度は「討伐戦」と比べ格段に上がる事から、ソロではなくパーティーでの参加が推奨されている。複数人からのパーティーならば、結界の消滅にも破壊にも対応出来るからである。
そんな殲滅戦を少女はクリス1人で
そして、今回の殲滅対象は500匹からの
更に付け加えると依頼書には、「
更に
だが現実はそこで終わらない。
魔獣の進化の過程は実証されていない事が多いが、特異な力を保有しているモノが
一方で更に付け加えると「最上位種」は、
「最上位種」は魔獣の種類に因っては複数種確認されているが、1つの「群れ」に於いて複数の「最上位種」が確認されると言った事案は無いとされている。
然しながら記録の中に拠れば、
「
更には「
「
拠って「
それ故に、ごく一部の上位ハンターにしか出回らない高難易度
ちなみに
更に討伐脅威度は
拠って今回の
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