第38話 Rudest Attacker Ⅱ
「デバイスオン、
クリスが生きる事を諦めた瞬間に声が響いていた。それは少女から放たれた1匹の
その速攻は
ガチンッ
「我が手に集え、光の力よ。我が敵を射る礫となりて、駆けろ!
ギャギャッギャース
『クリス、大丈夫?』
少女が放った
更には少女が放った
ギリギリのところで生命を救われたクリスが、頬を濡らしながら顔を上げると少女がそこにいた。その少女は身体中のあちらこちらから血が滴っている。
一見すれば「大丈夫?」と聞かれる側なのは少女の方だろう。
だがクリスは夜の帳の効果で、少女の様子を声からしか
『ちょ、クリス、生臭いわよ?それに、何か変な臭いもするし……』
『こ、これはあの魔獣の「よだれ」だ!顔に掛けられただけだッ!変な臭いなんて、此の身には、か、感じないぞッ。気のせいだ気のせい』
『そう?本当に大丈夫なの?でもあんまり時間がないの!』
『炎龍が出て来るわッ。LAMの準備を急いでお願いッ!』
クリスの頬を濡らしたのは死を覚悟したクリスの涙以外に、
夜の帳効果でクリスの顔は少女から見えていないが、クリスは自分の顔をゴシゴシと擦っていた。クリスはそれに感謝しなければならないと言えるだろう。
少女は尻餅を付いているクリスに手を差し伸べ、起きあがったクリスはLAMの元へと走っていく。
その場に残されたもう1体の
-・-・-・-・-・-・-
崩落が始まった炎龍の
そこは崩落の影響下にある場所ではなかったが、立ち止まってなどいられなかったのだ。
一方で炎龍ディオルギアは翼を羽ばたかせるが上手く飛べなかった。少しばかり上昇出来てもスグにバランスを崩し、壁に身体を激しく激突させ棲家の崩壊を助長させながら落下していった。
そんな事を幾度か繰り返す内に、炎龍ディオルギアは少女が逃げていった横穴を見付けたのである。
炎龍ディオルギアは足元が完全に崩落する前に、その穴に潜り込んでいく事に辛うじて成功していた。自身のサイズと比べると多少小さい横穴の壁に、身体を
要するに狭い洞窟を破壊しながら追い掛けていった事になる。
少女は足取りが重かった。もう走る事が出来ないくらい全身が痛かった。気を抜けばそのまま意識が飛んでしまうかもしれない。拠ってアドレナリン様々とはこの事だ。
だが痛みは引くどころか時間を追うごとに増していく。だから先に進みたい気持ちを抑えて1度立ち止まる事にしたのである。
「デバイスオープン、ローポーション」
周囲に敵影が無い事を確認した上で、少女は
ローポーションは錬金術で生み出される回復薬の1種である。効果は専門職である
ただし
そして少女は一時的とはいえ痛みが和らいだので、再び洞窟の出入り口まで急ごうとした矢先に後方から洞窟の破壊音が響いていったのである。
「飛び立てずにやっぱりこっちに来たわねッ!じゃあ、第2ラウンド開始といきますかッ!」
「我が右手に集え、荒れ狂う業火よ。我が左手に集え、
「我が手に集え、金色なる果実よ。敵を
少女は
炎龍ディオルギアは身体を擦り付けながら追い掛けて来ているので、必ず
そう、少女は
まぁ、そんな
狭い洞窟内に熱量をもった突風が吹き抜け、それは炎龍の雄叫びを上乗せして
少女は岩陰に身を潜めていたが少女の肌は、夏の強烈な陽射しに焼かれるようにジリジリと焼かれていった。
「弓よ、
炎龍ディオルギアは洞窟の壁に身体を擦り付けながら進んでいる。それに拠って設置された
だから爆発が起きる度に炎龍ディオルギアは傷を負っていった。
それらは本来ならばいい素材になるが、残念ながら回収は無理なコトは百も承知であり、そもそもこの話し自体が余談だ。
炎龍ディオルギアは前に進む事しか出来ない。後戻りする事は絶対に出来ない。だからこそ洞窟の外に向けて進んでいくしか選択肢はない。
そこにいくら罠が仕掛けられていようとも。
こうして炎龍ディオルギアは自分が向かっている方向のその正面に、さっき自分に対して攻撃を仕掛けてきた
-・-・-・-・-・-・-
「いち」
「にさん」
「よんご」
「ろく」
「なな」
岩陰で身を潜めながら詠唱を無事に終える事が出来た少女は、番えた矢を引き絞ったまま姿を隠すのをやめた。更には炎龍ディオルギアが必ず通るであろうその道のど真ん中に、凛とした姿で仁王立ちしていた。
そして少女は矢を番え引き絞ったまま炎龍の姿が見えるのを待っていたのである。
7つ目の爆発音が聞こえ7度目の熱風が吹き抜けていく。少女は肺が焼かれないように呼吸を止めると、視界の先の一点を見詰めていった。
そして数秒の後、そこに炎龍が雄叫びと共に現れたのである。
炎龍ディオルギアは自身に
ボッ…ボッボボボッ
炎龍の口の中に超高温の炎が凝縮されていく。そして炎龍は今すぐにでも
一刻も早く目の前のヒト種を炎で焼き尽くし蹂躙したかったのだ。
だがその一方で、急に業火で焼かれたウェルダンを食したくなってもいた。
「悪いけど、アンタのターンは待ってあげないからねッ!」
「ここで大人しくアタシに倒されなさいッ!!」
「
それは準備が終わらない炎龍ディオルギアに対して、既に準備が終わっていた少女の
概念魔術「
従ってこれは少女が考え出した
とは言っても
概念魔術は飽くまでも
従って模する概念がなく、
だが少女はそこに
こうして生まれた概念魔術が「
尚、こういった概念魔術を少女は、過去にいくつも生み出した上で
その度にトレーニングルームの自称「主」は顔を真っ青にした後で、真っ赤にしているがこれは余談である。
だがそれは偏に少女が卓越した知識を持っていて、魔術に対して深い造詣があるから為せるワザとも言えるので、厨二的発想などと言っては絶対にいけない。
その際の生命の保障は出来兼ねる。
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