第33話 Humble Battler Ⅴ
『これで全員みたいね』
少女の前に11人の
だが逆を言えば
今回の炎龍ディオルギア討伐戦の
だからこそ
それに付け加え、情報はどっかからか必ずと言っていい程に漏れる。そうなれば密猟者が戦力の乏しくなった
だから少女の中にある考えでは、
その為に
『じゃあ、これからテストをするわね』
『テストの内容は「鬼ごっこ」よ!』
『『『『『鬼ごっこ?!』』』』』
『詳細を説明するわねッ。まぁこれと言って、詳細も何もないんだけど。取り敢えずアタシから一定時間…そうね10分間逃げて頂戴!そうすれば、合格よ』
『だから逃げ切る事が出来ればその人は炎龍討伐戦に連れていくわ。でも逃げ切れなかったり、意識を失えばその人はそこで終わり。その場合はゆっくりと休んでね』
『でもそれじゃ
『
『どう?ルールは分かったかしら?』
少女のルール説明は、その場に集まった
だからそれは完全に後付けのルールだった。何故ならば少女は、
少女は
だからこそ挑発を含ませた。
もし仮に全員が全員揃って、
だからこそルールの中に挑発を織り混ぜて、それを
それは「
更にはその場合は少女が問答無用で意識を飛ばす予定なので、不満が挙がる事なく炎龍討伐戦に来られなくするコトが可能だ。
要するに「一石二鳥作戦」だった。
その場で少女の
ダフドはクリスから少女の人となりを
『それじゃあ、このコインをトスして下に落ちたら開始するわね。アタシを倒すつもりで向かってくる人は今から準備をしておいても構わないわよ?』
『やはり!そうなれば、此の身がやるべき行動は1つ』
その言葉はクリスが見抜いた
そして周りにいる
しかし警戒していたハズのダフドは安い挑発に乗ってしまった様子だった。
少女は現在の状況を見極めるとデバイスのタイマーをセットし、コイントスをした。
コインはゆっくり回転しながら少女の直上3mくらいの位置まで上昇し、そのまま回転速度を落とす事無く地面へと垂直落下していく。
「ちゃりーん」という音が息を飲む音すら聞こえる静寂の中に響き渡る。それと同時に
真っ先に少女に向かって走った者達は計7名。残りの4名の中で距離を取り様子を窺っている者がダフドを含めて3名。そして残りの1名は一目散に、全力で離脱していった。
そう、それはクリスだ。
少女は先ず向かって来た7名に対して問答無用で型を放った。
「豪炎の型ぁ!」
「うりゃりゃりゃりゃりゃおりゃあッ!!」
少女は武器を取らず拳だけで周囲に向けて実の拳の散弾をばら撒いた。
開始早々に少女に向かって走り、その身に施したバフに拠って既に少女の目の前まで迫っていた7名は、真っ先にその実の拳の散弾と言う名の連打を全身に浴びた。
拠って、その多過ぎる削りダメージから抜け出す事が出来ずに轟沈し、皆一様に意識を失って吹き飛ばされていった。
これが開始から5秒後の事だった。
更に少女はそのまま様子を窺っていた3名に向かって強襲した。
「流水の型ぁ、駆ける事の
しゅぱぱぱんッ
今度は少女から生まれた
ダフドは間一髪の所で躱す事が出来たが、残りの2名は強烈な
これが開始から7秒後の事だ。
最終的にこの場に残ったダフドと少女は対峙する事になった。その間にクリスは走るのをやめて、翼を広げると空を飛んで必死に逃げていた。
『流石は族長ね?あれで倒れてくれていれば、直ぐにクリスを捕まえられたんだけど、まぁ、アタシも慢心は駄目って事ね』
『ふふふふふふふふッ』
ぶるるッ
少女は口角を上げて楽しそうにダフドに近寄っていく。ダフドはその微笑みに妙な寒気を感じていた。
それは偏に獅子が全力で野ウサギに飛び掛かる寸前の様子にも見えたし、無防備なカエルを狙っているヘビのようでもあった。
ダフドは少女の力量に驚愕していた。そして自分達の非力さを恥じていた。
少しでも「勝てる」なんて
ダフドは
それでも少女が放った「流水の型」は紙一重で躱すのが精一杯だった。
少女はダフドに近寄ると、ただの
だがそれは目にも
少女は朝の会議から抜け出していた時間でセブンティーンの元に行き、そのトランクの中から様々な
なので今は
『最初から逃げたクリスが正解だったのか……』
『全く、なんたる事だ』
ダフドが完全に少女に対して打ち負け、少女の拳でダフドが吹き飛ばされた事で残りはクリス1人となった。
「後はクリスだけね。デバイスオン、索敵モード」
「さてと、クリスはどこかなー?」
少女はデバイスを使って逃げたクリスを探す事にした。更にはブーツに火を
これが開始から2分後の事であった。
『クーリースーリーデーーーまーーーてーーーーーッ!』
『ふふふふふ、クリスリーデどーーこーーだーーーッ?』
少女は抑揚を付けずに言の葉を紡ぎながら、笑顔を浮かべたままクリスを追い掛けていた。見ように拠っては正直怖い。
2人の距離は徐々に縮まりつつあった。それは翼で飛ぶ速さよりも、ブーツで駆ける方が速いので当然と言えば当然だ。
クリスはこのまま逃げ続けていても早い内に必ず追い付かれ、トレーニングルームで味わったあの「型」が自分に向けて放たれる事を想像し身震いした。
それ故に空を逃げ切る事は難しいと考え、速度を上げる意味も含めて眼下にある森に向かって自由落下していく。
「へぇ、分かってるじゃない」
「完全にクリスの事を
森の中で息を潜めてクリスは
息を
クリスは少女が持つ……否、
だからこそ勘違いをしていたと言えよう。
一方で少女は突如として逃げる事を止めたクリスを
それは結果として追い掛けるコトを止めさせ、様子を窺う事に換えさせた。
少女が「手傷を負わせられれば」と
だが幾ら様子を窺っていても時間が流れるばかりで……ん?時間?そう!ここで少女は唐突に思い出したのだった。
最初に設定した時間の存在を。
要するに
少女は突如として速攻を仕掛けていく。クリスの居場所は分かっている。だから、そこを目掛けて全力で疾走る。
残りの時間は30秒も無い。それ故に焦りからの速攻だった。
クリスは「息を潜めていれば大丈夫だ」という事が、「勘違い」だと気付いてはいなかった。しかし、クリスの行動は少女に様子見をさせる事で時間を無駄に
要するに今回はそれが「正解」だったと言えるだろう。
少女の速攻はクリスに届く直前だった。クリスは少女の速攻に気付き、剣を抜き少女を
「た〜いむ・いず・あ〜っぷ」
そしてそれは、少女の声がデバイスから響いた瞬間だった。
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