第30話 Humble Battler Ⅱ

『立ち去れ!ここは何人たりとも立ち入る事はまかりならんッ』

『それ以上こちらに来れば次は足元ではなくオマエの身体に突き刺さると知れッ!』


「この声って、バイザー持たずに迷って侵入はいった人はちゃんと理解出来るのかな?」

「まぁ、そんなコトはどうでもいっか。それにしても正面以外にも周囲からも狙っているのかしら?」

「まぁ、でもそれが戦術の定石よね。と、言っても、このまま戻ってクリスを待つのも癪なのよ。だから、ふふッ」

「説得してダメなら強行突破ねッ!」



『アタシはハンターよ。炎龍ディオルギア討伐の為にここに来たの。話しを聞いてもらえる?』


『『『『『ッ!?』』』』』


「ひぃ、ふぅ、みぃ…うん、軽く反応したのは5人くらい…ね」


『炎龍の件は、とある者に託している。その者がいないのであれば、引き取り願おう』


『そう…それは残念ね。でもそれじゃあ、事にするわッ!』


『それならば、ここでむくろさらす事になる』

『皆の者!射よッ!!』


 声と共に一斉に矢が少女に向かって来ていた。その数ざっと数えて10本と言ったところだ。

 やはり気配だけで数えるのは誤差があり過ぎるらしい。


 ちなみに少女に向かってくる矢は、動きこそ直線的だがそれぞれ微妙に角度がつけてあり前後左右の逃げ道を断つような「矢の結界」を作り飛来して来ていた。


 然しながら少女は「たッたたッたッたたたんッ」と華麗な体術ステップで、それら矢の結界をさも当然のように躱していく。

 更には躱しながらも正面に向けて全力ダッシュしたのであった。



『こっこまでおいで~。あははッ』


 と相手を挑発しながら。



『逃がすなッ!追えッ!』

『村にも連絡し応援を来させろッ!』

『我らをバカにしたコトを後悔させてやるのだッ!!!』



-・-・-・-・-・-・-



 少女と別れ上空から村への入り口を探していたクリスの明るい翠色の瞳は、懐かしくも切ない物を発見しその場所へと降り立っていた。

 それは、炎龍に因って焼かれた住居跡だった。



『やはり、ここら辺で間違いは無さそうだ』

『ならばここから先は飛ぶよりは歩いた方が見付けやすいかもしれん』

『同朋達よどうか無事でいてくれ!』


 クリスは独り言の中に切なる願いを込めて付近の捜索にあたる。



『クリスか?クリスなのか?』


『ん?ライルガル?ライルガルなのか?』


『戻ったのか、クリス!』


『あぁ、戻ったぞ!無事だったのだな!だがもう安心だッ、此の身はちゃんと、きゅ…』


『クリス悪いが今は一大事だ!村に侵入者が入って来たらしくてな、同朋達が侵入者の元に向かっている。密猟者かもしれん!』

『侵入者はサルの様にえらくヤツらしい。クリスは旅の疲れもあるだろうが、急いで、旅の報告の前に侵入者の件を長老達に報告してくれッ!』


『なっ!?密猟者だと?密猟者めッ!許せん!!此の身の村を襲うとは!!』

『一刻も早く長老達に報告しなければ!!』


 ライルガルはクリスに長老達への報告を頼むと足早に応援に向かった。一方で同朋との再会を無事に果たしたクリスは目頭が熱くなっていたが、同朋から齎された内容は怒りで頭を沸騰させる程に熱していた。



『密猟者め!こんな時に限ってやって来るとは』


ぎりッ


『何故、こうも此の身らばかりが苦境に立たされるのだ』


 クリスは怒りで熱くなっていたものの何故か冷や汗が止まらなかった。そしてその冷たい汗は火照ったクリスの背中を流れていくが、クリスはその前に疑問が残っていたのである。



『いやしかしだな、報告も何もその前に長老達はどこなんだ?』

『ただでさえ広い、この森のどこにいるんだーーーーッ!!』




 クリスは長老達を探していた。そして同時刻の少女は逃げ続けていた。



『そっちだー、そっちに行ったぞッ!』

『早く捕まえろー』 / 『ええい、何をやっている!』


『例の密猟者か?ならば長老達へ報告する前に此の身が討ち取って手土産にしてくれる!』


 クリスは放浪の結果、長老達を見付ける前にその声を聞いてしまった。だからこそ腰の長剣ロングソードを抜き構えを取るのだった。


 当然の事ながら少女は突如として正面に現れた人影をクリスだとは思っていなかった。が、突然現れた為に多少は混乱していた。

 更にはアラームが鳴り響いておりそれが一層混乱を助長させていった。


 少女の事を密猟者だと思い込んでいるクリスが剣閃を放つ。少女は混乱しながらもアラームのおかげですんでの所で剣閃を躱し、2人は顔を突き付けたのだった。



『えッ?!』 / 『あっ!?』


『何で貴殿がここに?貴殿は密猟者だったのか?』


『ちょっ、クリス?アタシが密猟者?何を言ってるの?冗談やめてよねッ!』


 2人はなんでお互いがそこにいるのか全く分からない為に、と言い争いをしていた。

 少女を追い掛けていた者達はその2人の姿に、なっていた。



『クリス!これは一体どうなっているのか、聞かせて貰えるか?』


親父殿オヤジどの……』


 威圧感のある1人の男が追い掛けて来た者達の間から「ぬっ」と現れ、クリスに向けて言の葉を投げていた。

 辺りは先程までの喧騒がまるで嘘のように静まり返っていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る